当施設に発生した昆虫類について



弘前大学医学部附属動物実験施設
八 木 沢  誠    

 当施設は開設後15年になるが、これまで3種類の昆虫が発生した。昆虫が動物実験に与える影響 については不明な点も多いが、不快動物として実験者、技術者に与える影響は非常に大きい。

1.ジンサンシバンムシ Stegobium paniceum Linne
 シバンムシ科に属する昆虫は世界で1,000種、我が国で54種が知られている。幼虫は乾燥植物質の ものを食うため、食品害虫として重要なジンサンシバンムシ、タバコシバンムシ、樹木を穿孔加害するマツサイシバンムシ、和紙を 穿孔するフルホンシバンムシ、古い木材を穿孔加害するケブカシバンムシ、畳表を食害するクシヒゲシバンムシなどが知られている。 私どもの施設に発生したのはジンサンシバンムシで、1994年7月と8月の2回発生が見られた。発生源はいずれも実験者が持ち込んだ 飼料である。

2.ホシチョウバエ Psychoda alternata Say
 体長1〜5mmの微小種で、からだ全体は灰黒色、体表には毛が密生している。頭は小さく、背面からは毛 にかくれて見えない。翅は菱形で、横脈がなく、脈の上には長毛が生えている。我が国で普通に見られるチョウバエ類には、ホシチョウ バエとオオチョウバエの2種あるが、私どもの施設で見られたのはホシチョウバエのみであった。

3.ニセケバエ類 Scatopsidae
 成虫は体長3mm前後で、体は黒色で光沢をもっている。翅脈と触覚が特徴的である。すなわち、翅脈は前縁脈と 亜前縁脈および亜前縁脈から分岐するように伸びる径脈が強調されるの対して、その他は痕跡的となっている。触覚は、7〜12節よりなるが、 一般に頭部より長く、密着した数珠状で、全体的には太短い棍棒のように見える。ハエと名付けられているが、むしろカに近い仲間であり、 ゴミカ科と称されることもある。

 上記2種はいずれも排水溝など有機物の多い汚れた水域に広く発生する昆虫である。私どもの施設では1994年頃 から発生が見られ、発生源はいずれも流水架台に付着した汚泥である。今回はこれら3種類の昆虫類の特徴、発生状況、駆除法について実例を まじえながら紹介したい。




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