実験用ウサギのコクシジウム症


―第2報 治療薬剤について―


九島秀美,助川康子,佐藤政義,石郷岡清基,松田幸久
秋田大・医・動物施設          


 コクシジウム症は実験用ウサギの疾病の中で最も重要な原虫であることから,当施設では搬入後の検収・検疫は 必要不可欠と位置づけをしている。その結果,第1報として感染率について報告したが,搬入ウサギの約45%にコクシジウムが感染していた。 そこで第2報としてその陽性例について治療実験を実施したので報告する。

【検査対象及び方法】

  1. 検査対象は第1報のデータに基づき,陽性67例をA,B群に分けた。つまりA群としてタイプIが14例,IIが8例,IIIが8例の計30例。B群は タイプIが27例,IIが4例,IIIが6例の37例である。

  2. 供試薬剤は2種類で,従来から一般的に使用しているサルファ剤のジメトキサンNZ(日本全薬工業KK)を50〜100mg/kg 飲料水に溶解し自由 摂取させた。一方,ニワトリのコクシジウム症の治療薬であるコクシサイド(塩野義製薬KK)は3mg/Lを上記同様飲料水に溶解することにより治療 を実施した。なお,治療日数はタイプ別にIが3日間,IIが5日間,IIIが7日間である。

    【成績及び考察】

     陽性67例のコクシジウム感染ウサギに対しサルファ剤と,コクシサイドの2種類の薬剤を用い治療実験を実施した。 その成績は表1,2に示した。それによると従来から用いられているサルファ剤では,治療後1日では15/30(50%),7日で8/15(80%)の陰転数で, 全体では23/30,77%の陰転率であった。一方,コクシサイドでの治療後1日では25/37(68%),7日で12/12(100%)と陽性37例全て陰転 し完全に治癒した。

     石井(日獣)は肝臓コクシジウムでは3日間で良好としているが, 今回の成績で見るかぎりでは薬剤耐性コクシジウムが存在することも考えられた。一方,ニワトリの抗コクシジウム剤であるコクシサイドによる治療では 肝及び腸管コクシジウムに対し良好な治療効果が得られた。しかしながら,抗コクシジウム剤を使用することによりウサギ体内の血管が収縮するなど弊害も 指摘されていることから,今後はその辺に充分気をつける必要がある。



    表1 サルファ剤による治療効果

     
    タイプ陽性数治療日数1日7日
    I1437/14(50)2/7
    II4/8(50)4/4
    III4/8(50)2/4
    30 15(50)8(80)
                       ※1例は治療後未検査

    2 コクシサイドによる治療効果

     
    タイプ陽性数治療日数1日7日
    I27317/27(63)10/10
    II43/4(75)1/1
    III65/6(83)1/1
    37 25(68)12(100)
     
     
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