シジミエキスが持っている肝臓機能の保護作用
―肝炎発症モデルLECラットによる解析―

弘前大學医学部保健学科検査技術科学 佐々木甚一

 古来よりシジミには、「肝臓機能改善作用」があると科学的裏付けが無いまま言われてきた。青森県は高品質のシジミを生産する県として知られており、市浦村の十三湖が代表的なシジミの生産地である。

 一方において、大學は民間企業との共同研究を一層推進すべきであると大きな命題が課せられ、全国的に産官学の共同研究プロジェクトが立ち上がり活発に動き出している。私達は代表的な青森県の地場産品の一つである「シジミエキス」の肝機能改善効果を科学的に証明してくれとの依頼を受け、民間企業、(旧)青森県産業技術開発センターとの共同研究を開始した。

 実験に使用したシジミエキスは、(1)シジミを収穫した後、直ちに熱水抽出したもの (A-0)、(2)シジミを収穫した後、冷凍保存してから抽出したもの (A-1)、(3)両エキスを混合してあるアミノ酸の組成を調整したもの (A-2)、以上の3種類を実験材料とした。

 肝炎モデルとして自然発症型のLECラットを使用した。このラットは、生後6ヶ月前後で肝炎を発症し、多くは激症型肝炎で死亡する。生存した動物は慢性肝炎に移行し、肝硬変、肝がんの経過をたどり一年半前後に肝がんで死亡するモデルである。このモデルラットにシジミエキスを水溶液として連日経口投与し、肝機能酵素などを測定しながらその効果を判定した。

 シジミエキス投与群は急性肝炎の発症を抑制し、特にA-0投与群のラットは70% (7/10) の動物が激症肝炎のステージを乗り越えたが、水を投与した対照群の生存率は10% (1/10) であった。また、A-0シジミ投与ラットの最長生存期間は二年半であった

 。本講演ではシジミエキスの肝臓機能の保護作用について、実験動物としてのLECラットを紹介しながら私達の研究結果について述べてみたい。

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