日本実験動物技術者協会
平成17年度 奥羽・東北支部合同勉強会
プ ロ グ ラ ム

□ 9:00~9:05  開会挨拶  井上吉浩(東北支部長)

◎ シンポジウム

テーマ「動物実験施設の管理・運営  -今、取り組んでいること- 」

□ 9:10~9:45(講演30討論5

S1. ,検疫システム、2,基本手技研修、3,マウスリソースについて

○小山内 努(北海道大学・院・動物施設)  [第  回実技協本部共催講演]

□ 9:45~10:00(講演10討論5分

S2. 「二種省令」に係る当施設の対応

○井上吉浩、佐々木秀一、高梨千代、村上まゆ子、池田真理子、鈴木宏子

(東北大・加齢研・実験動物管理室)

□ 10:00~10:25(講演20討論5

S3. 動物実験部門受益者負担金の算出根拠と支払い方法の変更について

○松田幸久、岡部美紀子(秋田大学バイオサイエンス教育・研究センター)

□ 10:25~10:50(講演20討論5

S4. 福島県立医科大学実験動物研究施設の特徴

○片平清昭、遊佐寿恵(福島県立医科大学・実験動物研究施設)

 

□ 10:50~11:00  - 総合討論

 

□ 11:00~11:10 休憩

 

一般講演講演討論

11:10~11:40   座長 遊佐寿恵(福島医大・実験動物)

. 環境条件の変化(振動)によるラットへの影響

○葛西律子、今井信子、馬場秀明、三上寧士、八木澤

(弘前大学医学部附属動物実験施設)

2. ラットにおける不定期照明の血球変動について

○馬場秀明、今井信子、葛西律子、三上寧士、石田邦夫、八木澤

  (弘前大学医学部附属動物実験施設)

. 実験用ウサギの飼育現場から

○今井信子、馬場秀明、葛西律子、三上寧士、石田邦夫、八木澤

(弘前大学医学部附属動物実験施設)

 

11:40~12:50  休憩(昼食)

 

12:50~13:20   座長 馬場秀明(弘前大学医学部附属動物実験施設)

. ソフト酸化水の消毒•殺菌に対する評価

○石郷岡清基、助川康子、鈴木美帆子、松田幸久

  (秋田大バイオサイエンス教育研究センター・動物実験部門)

. コットンラット(メス)の成長に伴う摂餌量および飲水量、糞量、尿量について

◯丹治静保、片平清昭(福島医大・実験動物研究施設)

6. 麻酔がラットの血糖値におよぼす影響

○遊佐寿恵、片平清昭(福島医大・実験動物研究施設)

 

13:20~13:40   座長 末田輝子東北大院・医・動物実験施設

. 帝王切開術を用いたMouse hepatitis virusとMycoplasma pulmonis 混合感染マウスの移送時清浄化の試み

○伊藤恒賢)、尾﨑順子)、本間貞明)、長橋 武)、秦 正充)2)、三ツ口陽子)2)

鈴木浩美)、神村栄吉)、大和田一雄)3)

1)山形大・医・動物施設,2) ?Mジェー・エー・シー,3)(独)産業総合技術研究所)

8. 129/Sv系統マウスのPZDを用いた体外受精の検討

◯神村栄吉1)、秦 正充1)2)

1)山形大・医・動物施設、2)?Mジェー・エー・シー)

 

13:40~14:00   座長 一戸一晃(環境科学技術研究所)

9. 東北大学大学院医学系研究科附属動物実験施設におけるマウス胚操作技術業務

○西尾啓輔1、須田博美2、木伏智美1、宍戸公信3、岡村匡史4、笠井憲雪1

1)東北大院・医・動物実験施設、2)医・創生応用医学研究センター、3)?Mジェー・エー・シー、4)国際医療センター研・ヒト型動物開発)

10. 東北支部アンケート調査の結果報告について

○井上吉浩(東北支部長)

 

14:00~14:05  閉会挨拶  一戸一晃(奥羽支部長)

 

シンポジウム S1(第   回本部共催講演会)

 

「動物実験施設の管理・運営 - 今、取り組んでいること -」

― 1,検疫システム、2,基本手技研修、3,マウスリソース、―

 

小山内 努(北海道大学大学院医学研究科附属動物実験施設)

 

当施設は、新たな業務として1、分与される動物(マウス、ラット等)の検疫システム、2、動物実験実施における初心者対象の「基本技術の研修」、3、マウスリソース部門を立ち上げている。ここでは、それぞれの目的及び概要等について紹介する。

 

分与される動物(マウス、ラット)の検疫システム

目的:動物授受に伴う他研究機関からの病原微生物の侵入防止に努める。

概要:専用隔離室の確保は既存設備の一部改修で行い、一定期間の隔離後の検査対象微生物は搬入する飼育区域毎に多少の違いを設けている。人的対応は施設職員の兼務とし、動線の遵守には充分な注意を払っている。

実施実績:平成14年5月から現在まで、分与機関数は国内研究機関21施設、米国研究機関6施設、分与されたマウス総数480匹、ラット総数21匹である。隔離飼育後の微生物検査は全て陰性の結果である。

 

基本技術の研修システム

目的:初めて実験をする方が、ケージ交換法・保定法をはじめ採血や投与法等の正しい基本手技の習得を行う。

概要:参加費無料。申し込み受付随時。受講は1名から可。

対象動物はマウス、ラット、ウサギ、イヌ等。

実施実績:平成16年10月から現在まで、研修実施が24回(日)、受講者数は延べ54名が受講している。

 

マウスリソース部門について

目的:TgKOマウスの急増は飼育スペースの狭小、並びに感染症発生等の大きな原因になっている。そこで、施設側が全面的にTgKOマウスの受託飼育を行い、これらの解消の助けとする。

概要:従来、利用者の飼育実験区域であったバリア区域をマウスリソース部門に変更し、施設専任職員以外の立ち入り禁止とした。実際の業務は各実験計画にそって、維持繁殖及び供給を行う。また、遺伝子解析の際のテールカットや採血手技等も施設側が実施している。

実施実績:平成16年8月から現在まで、受託した研究グループ数が13、マウス飼育実数は722匹、テールカット回数が1965回である。

各システムの詳細や課題については発表時に紹介する。

シンポジウム S2

 

「二種省令」に係る当施設の対応

 

○ 井上吉浩、佐々木秀一、高梨千代、村上まゆ子、池田真理子、鈴木宏子

(東北大・加齢研・実験動物管理室)

 

 言わば自主規制であった「組換えDNA実験指針」が法制化され、平成16年2月19日より「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」が施行されている。遺伝子組換え実験は、同法に基づき制定された「研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令」、いわゆる『二種省令』に則り実施されることになった。極めて難解な法律ではあるが、安全管理上、実験動物に直接携わる技術者としても十分把握しておかなければならない重要な法律である。

当動物施設で飼育されている遺伝子組換え生物は、実際にはマウスである。すなわち、第二種使用等(環境中への拡散を防止して行う実験、飼育、運搬、保管など - 物理的封じ込め)になる。この省令に当てはめれば動物使用実験となり、動物作成実験および動物接種実験がこれに該当する。さらに、当施設内においては大臣確認実験(HIV、ポリオ等、および省令で規定されていないもの)は設備上できないことにしており、P1AおよびP2Aまでの機関実験として認めている。機関実験を行う場合、実験者は本学の遺伝子組換え安全委員会に申請しその承認を得てから実施することになるが、新たな申請書「第二種使用等拡散防止措置確認申請書(旧;DNA組換え実験計画申請書)」において、施設等の概要を記載する項目がある。動物施設を利用している場合は、その拡散防止措置の具体的内容、施設の全体図や飼育実験区画の詳細図および施設の機関あるいは文科省担当官による現地確認が行われている場合には、その旨および当該確認が行われた日を記入しなければならない。そこで、実験者の申請手続きに際して施設として速やかに対応するため、当研究所の遺伝子組換え安全委員会安全主任者など動物実験に関連の役職のメンバーで当施設の実地見聞を行い、第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等の状況を確認、その確認書(当施設の第二種使用における拡散防止措置が確認された証明書のようなもの)を作成した。この書類は、遺伝子組換え実験申請書の添付資料になるばかりか、遺伝子改変マウスの譲渡等の際、先方機関から当施設が拡散防止措置等を行っているかどうかのOfficial documentsのリクエストがあった場合にも活用している。

一方、遺伝子改変マウスの譲渡・譲受に関しては、本学は文科省より厳重注意を受けたのを機に、7月下旬に情報提供書の書式や承認手続きのシステムが構築され、現在ではこのシステムに準じて特に問題なく実施されている。

 

 

 

 

 

シンポジウム S3

 

動物実験部門受益者負担金の算出根拠と支払い方法の変更について

 

○ 松田幸久、岡部美紀子(秋田大学バイオサイエンス教育・研究センター)

 

昨年の4月より秋田大学が独立法人化され、さらに動物実験部門は全学共同利用施設であるバイオサイエンス教育・研究センターの一部門となった。組織形態が変わることにともない、利用者も学部内から全学に広がり、さらに学外者も受け入れることとなった。このような変革により施設運営も大きく変わってきている。特に、施設を運営する上で大きな比重を占める受益者負担金に関しては、これまで主に校費により支払われていたが、現在は学外資金からの支払いも受け入れている。さらに科学研究費補助金(科研費)の使用方法の弾力化(2005年度版科研費ハンドブック(研究者用)10ページ参照)等により科研費での経費負担も可能となったこともあり、受益者負担金を科研費あるいは奨学寄付金等で支払うことを希望する学内利用者も増えている。そのため受益者負担金を校費以外で支払えるシステムを他大学の例を参考として構築した。また、科研費による支払い方法を可能とするに当たり、受益者負担金の算出根拠を提示する必要があった。これに関しては長崎大学医学部附属動物実験施設の「動物実験の際の受益者負担経費はどのように決められたか?」(http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/lac/shiikukeihi.html)および「動物実験施設の運営にいくら必要かー慶大医学部施設の例」(アニテックスvol.14 No.3. 27-32. 2002)を参考として算出した。

今回の発表では、秋田大学における科研費による受益者負担金の支払い方法および受益者負担金の算出根拠について説明する。

大学事務部の協力をいただいて10月から科研費による受益者負担金の支払いを開始したが、動物実験部門の事務作業にかかる負担は今のところ従来と変わりがないようである。このような方式をすでに実施している他大学での経験をお聞かせいただければ幸いである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンポジウム S4

 

福島県立医科大学実験動物研究施設の特徴

 

片平清昭、遊佐寿恵(福島県立医科大学・実験動物研究施設)

 

1.委託化による施設運営

 飼育管理業務の委託化は動物管理員の定年や退職を契機として19984月から開始した。当初、マウスおよびラットの飼育管理であったが、その後ノックアウトマウス等遺伝子組換えマウスの急増により、感染実験室を除くすべての動物の飼育管理、滅菌作業(AC3台、EOG1台)について実験動物飼育管理業務を専業とする受託会社に委託している。マウスの飼育管理には微生物モニタリング検査を含む。なお、ケージ洗浄は県消費組合と単価契約を結んで3名の従事要員(パート)で実施している。

 受付事務は実験動物施設情報処理業務と位置づけて外部業者に委託し、施設内事務の他に動物実験委員会(動物実験計画書承認事務)の事務の大半も担当している。業務従事要員には1名以上の情報処理関連資格者を要求し、フルタイム1名、パート2名(それぞれ年間980時間)が従事している。

大学や研究機関において動物実験施設関連業務の委託化は今後急速に進められるはずであり、円滑な施設運営のためのさまざまな工夫が必要である。特に、専任職員と委託業者の要員との細部にわたる現場情報の共有はヒューマンエラー対策や事故防止の面できわめて重要と考えられる。

 

2.設備機器類のメンテナンス

 重要設備機器や労働安全衛生面から必要と考えられる機器は予算措置により年1回の定期点検整備を実施している。これらの対象は、高圧蒸気滅菌装置(検査も含む)、エチレンオキサイドガス滅菌装置、ケージ洗浄装置、ウサギオートスクレーパー、レントゲン撮影装置である。また、エアーシャワー(2台)、飼育装置ブロワーユニット、バイオハザードキャビネット(5台)、クリ-ンベンチ(2台)等については数年ごとに予算措置により点検整備を行っている。

その他、各種飼育装置や自動給水装置、血液ガス分析装置、大型超音波洗浄装置等は、不具合発生時や必要の都度に修理やフィルター交換等を行っている。

 

3.飼育器材類の工夫

 限られたスペースで利用者からの飼育や実験に関するさまざまな要望に応じるための飼育室や飼育器材類の調整が困難な状況にある。増築等は財政上の問題から不可能な現状であり、できる限り経費をかけないで利用者の要望に応じるために飼育器材類の工夫や改良を行っている。

その例として、イヌ用ステンレスケージを2分割してウサギを飼育したり、ウサギ用ケージでラットを飼育する等の試みがある。また、FRP流水洗浄架台やウサギ用オートスクレーパーの洗浄面上にステンレスパネルをかぶせてマウスやラットのプラスチックケージを置くという工夫もある。このような工夫はいつでも元の状態に復元できるという利点がある。

 

4.学外獣医師による外部評価

“遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律”や,改正強化された“家畜伝染病予防法”の適用を受ける。さらに,実験動物の感染事故防止と動物愛護の両面から,飼育上における獣医学的監視や管理が強く求められる状況となっている。遺伝子組換え動物の国内外の研究機関への分与の際に動物の健康状態を証明する証明書の発行が必要である。

このような状況から、2005年から県獣医師会所属の獣医師に依頼して、月1回(1回3時間程度)次ぎのような獣医学的監視及び動物実験に関する獣医学的指導助言を受けるようにした。

(1) 動物の適切な飼育状況の獣医学的評価、(2) 罹患動物の安楽処分に関する助言、(3) 諸検査データの判読に関する適切性の評価、(4) 他の研究機関への分与動物に関する検査証明書の発行、(5) 諸外国研究機関へのマウス等分与の際に必要な検疫に関わる獣医学的証明書の発行、(6) 動物実験計画書における動物への麻酔処置等

 

5.実験動物学関連の研究

テレメトリー(無線)法によるラットの血圧を無麻酔、無拘束状態で長期間記録することにより、血圧や心拍数の明暗リズムや日内変動、分娩時や授乳中の循環動態などに関した貴重なデータを集積している。高血圧や糖尿病に注目し、それらの遺伝的素因をもつ病態モデルラットを用いて健康食品を長期間摂食させた場合の血圧や脂質系に注目した血液生化学所見について検討している。さらに、宇宙実験を行うための基礎データの取得として、小型ジェット機によるパラボーリック飛行実験を行い、重力変化と血圧変動の関係について多くのデータを集積してきた。

実験動物の血液生化学検査における測定精度向上のためのさまざまな検証を行っている。すなわち、TGなど脂質の測定には血清を、Gluや酵素の測定には血漿を用いるべきであり、TGはどのような条件下で保存しても、採血後5日以内に測定する必要があること、などを明らかにしてきた。抗凝固剤としてヘパリンを用いる場合には、溶血に注意し血液を速やかによく混ぜる。血漿中に残存する血球の影響を受けやすいGOTLDHCPKの測定には再遠心をして、血小板を含まない血漿を分離する。

 

 

 

 

 

 

 

一般講演1

 

環境条件の変化(振動)によるラットへの影響

 

葛西律子,今井信子、馬場秀明、三上寧士、八木澤

(弘前大学医学部附属動物実験施設)

 

実験動物の環境条件が実験成績に影響を与える事はよく知られている。動物実験に影響を及ぼす要因の一つとして、輸送による長時間の振動が考えられる。振動がラットの生体にどのような影響を及ぼすかを、性周期、血液性状、体重、摂餌量など、私達に出来る手技の範囲で検討したので報告する。

材 料

ラット:JCL,SD,♀、38匹(週齢は不揃い)

振動:恒温振盪水槽(振幅2cm、1分間に106往復)を利用したので横方向のみの振動                   

血液測定:シスメックスF-520  体重測定:上皿電子天びん

方 法

性周:定法に従い膣垢採取後ギムザ染色し、性周期の安定しているラットを3時間、6時間、12時間、24時間の4グループ(各々4)に分け、振動後の性周期の変化を観察した。

:ネンブタール麻酔下で後肢の静脈から毛細管にて血液を集め、自動血球計測器で測定した。赤血球、白血球など、あらかじめ安定している事を確かめ、上と同じく振動を与え血球数の変化を調べた。

体重測定:毎日同じ時間に測定し、振動による体重の減少と回復を調べた。

結 果

性周期:振動後多少乱れたような感はあったが、特に際立った変化は見られなかった。

血 液:振動直後から数日に渡って測定したが、振動以外の麻酔によるストレスの影響もあるのか、赤血球、白血球とも測定値にばらつきがあり、それが振動によるものかどうか判定できなかった。

体 重:一般に言われている通り振動後は減少したが、今回の観察では回復の様子は必ずしも振動の長さに比例しなかった。3時間グループは動いている時間が短いせいか体重の減少も少なく、3日位で元の体重に戻った。また、24時間のグループも、振動後の体重の減少が大きい割には回復が早く、これも数日で元の体重に戻った。これに対し体重の戻りの遅かったのが、6時間と、12時間の振動グループであった。体重の減少の大きさは振動時間の長さに比例していたが、回復は必ずしも同じにはならなかった。

摂餌量、摂水量:共に振動時は非振動時の約半量位だった。ラットは餌や水は活動期の夜に8割以上を摂取するので、日中の輸送による移動中は、あまり餌を食べていないものと思われる。したがって輸送による体重の減少は、振動など環境の変化と、移動中あまり摂食しないことの双方の状況からではないだろうか。

一般講演2

 

ラットにおける不定期照明の血球変動について

 

馬場秀明、今井信子、葛西律子、三上寧士、石田邦夫、八木澤

(弘前大学医学部付属動物実験施設)

             

最近は実験動物飼育管理においても数々の自動化が進み、飼育室の照明もほとんどの施設ではタイマーによる自動照明である。当施設では,朝8:00~夜8:00までの12時間照明に設定されているが、夜8:00以降に出入りする実験者の中には手動で照明をつけ、実験終了後もそのままの状態で飼育室の照明がつけ放しの時もまれにある。動物の飼育管理にあたって、照明が非常に大事な事であり、照明リズムが崩れた場合には動物の生理的リズムが狂うため、朝見回りの時に照明タイマーを確認するのが日課の一つである。

今回はラットを使い、通常照明の12時間と不定期な照明で飼育管理をした場合のラットに与える影響についての血球数の変動から検討したので報告する。

 

【材料:方法】

1,ラット:市販のSD♂を使用 各群3匹,計9匹

, 対照群:飼育室の照明を(午前8:00~午後8:00)12時間

      通常照明である。

3,1 群:飼育室の照明を36時間連続明るく設定

4,2 群:飼育室の照明を36時間連続暗く設定 

5,測定前に体重測定を行う

6,採血時間:前・6・12・24・36(時間)5回行う

7,採血方法:エーテル麻酔・保定後に頸静脈から0,3ml採血

8,測定項目:体重・RBC・WBC・Ht・Hg

9,測定機材:SysmexF-520使用

 

【結果】

■ 通常照明の12時間、明・暗においてはあまり血球数の変動に影響がな

 いことがわかった。

 

■ 長時間明るい飼育室と、暗い飼育室では、それぞれの血球数の変動に

  影響を与えていることがわかった。

 

 

 

 

 

一般講演3

 

実験用ウサギの飼育現場から

 

今井信子、馬場秀明、葛西律子、三上寧士、石田邦夫、八木澤

(弘前大学医学部附属動物実験施設)

 

 私どもの施設では年間約150~230頭前後のウサギが実験に使用され、常時100頭前後が実験中である。私どもの施設における実験用ウサギ飼育管理に関する大きな変更点として次の三点がある。

?@       平成 7年 ウサギ飼育室の空調設備更新および一部ケージを大型サイズ

にした

?A       平成15年   従来サイズのケージを更新した

?B       平成15年   実験用ウサギをコンベからヘルシーウサギに変更した

?@?Aについてはこれまでも当勉強会で述べているので省略する。今回は?Bのコンベからヘルシーウサギに替えたことを主体に飼育担当者として感じたことを述べる。

コンベウサギは搬入されると1週間検疫室に収容し、一般状態、糞便の状態、耳疥癬、コクシジュウム、血液検査などを行い、異常のないものを飼育室に収容した。コンベウサギは1週間の検疫を行ってから飼育室に収容しているにもかかわらず、飼育室に移動してからも時々くしゃみ、軟便、目やに、食欲がない、痩せている、餌箱の餌を掻きだすなどの見られる個体もいた。

平成15年9月以降搬入されたウサギは全てヘルシーウサギで、生産場でSalmonella. Pasteurella. Eimeria. 疥癬などを2ヶ月に1回定期的に検査している。これまで約2年間ヘルシーウサギを飼育管理して感染症の疑いや悪癖のあるウサギはほとんど見られなくなったが、まれに自動給水装置を使えないウサギがいる。

ウサギの実験利用数はこれまで200頭前後と過去10年間大きな変動はないが、利用講座数は年々減少している。これまでは多種の実験にウサギが利用されてきたが、最近は特定の実験で多くのウサギが利用されている傾向が見られる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一般演題4

 

ソフト酸化水の消毒•殺菌に対する評価

 

石郷岡清基、助川康子、鈴木美帆子、松田幸久

(秋田大バイオサイエンス教育研究センター 動物実験部門)

 

 我々の施設では、特に飼育室内の消毒、殺菌には70%エチルアルコール、次亜塩素酸ナトリウム液等を主に使用しているが近年、酸性水による殺菌効果が注目されている。そこで今回、弱酸性水(商品名:ソフト酸化水、KKオーク)の殺菌力等について検討したので紹介する。

1. 供試ソフト酸化水の性状はpH.4、有効塩素濃度10および20ppm

2.方 法

 ⓐ作業台上の生菌数は無処理群(コントロール)と処理群つまり飼育室内に設置してある作業台の一部を酸化水(20ppm)に浸したペーパータオルで拭き1、10、60分後に滅菌綿棒にて拭き取り血液寒天培地を用い培養検査を行った。

 ⓑ給水ビン内の生菌数はA群:給水瓶(200ml用)およびノズルを酸化水(20ppm)中に1時間浸漬させた後、水道水および滅菌水を充満、それをマウスに自由飲水させた。B群:酸化水(10ppm)をマウスに自由飲水。C群:コントロールとして水道水および滅菌水をマウスに自由飲水。

 ⓒ培養検査は血液寒天培地で1、3、5日目に飲水0.ml中の生菌数を算定。

 ⓓ生体系への影響は塩素濃度10および20ppm酸化水をマウスに30日間自由飲水させた。安楽死後、肝機能および病理組織学的検査(HE染色およびTUNEL染色)を実施。

.

 作業台上の生菌数は無処理群の平均で17コに対し処理群での平均は1コと明らかに差が見られた。また、給水ビン内の生菌数でも酸化水投与群(B群)は5日目でも生菌数は最も少なかった。

 次に生体系への影響を知る目的で肝機能検査を実施したところ、10ppm飲水群ではほとんどの項目が正常値であったのに対し、20ppm群ではLDH

>900U/LGOTが554U/Lと非常に高値を示した。このことは明らかに肝炎の疑いがあるように思えた。そこで、それらについて病理組織検査も実施したのでその所見も紹介したい。

 

発表スライド

 

 

 

 

 

 

一般演題5

 

コットンラット(メス)の成長に伴う摂餌量および飲水量、糞量、尿量について

 

丹治静保・片平清昭(福島医大・実験動物研究施設)

 

コットンラットの成長に伴う体重、摂餌量、飲水量、糞量、尿量を4週齢ごとに測定した。

材料および方法

実験にはコットンラットのメス5例を用いた。いずれも40世代以上の兄妹交配を継続したものである。個体識別を行い生後4週齢から16週齢までは4週間ごと、25週齢(4)32週齢時(3)に体重、摂餌量、飲水量、糞量、尿量を測定した。これらの測定は、FRPラットブラッケトケージ (日本クレア()製,CL-0408)に1匹ずつ入れ、その下に尿収集装置 (日本クレア())を設置した。摂餌量はFRPケージ用餌箱に市販飼料(日本クレア()製,CE-2)を入れ摂餌前後の重量を測定した。食べ落ちた餌は、紙で集め食べた量より差し引いた。飲水量は小児用点滴セットにシリコーンチューブを接続し、その先端にラット自動給水用ノズル(日本クレア()製,PV-25)を繋げて、FRPケージの柵に取り付けて測定した。糞量は尿収集装置の網上に落下したものを集め秤量した。尿量は尿収集装置のV字部分に、尿容器としてスッピッツ管10ml用を用いて採尿した。量はツベルクリン用1mlシリンジで計った。尿の蒸発を防ぐためにケージの上からビニールシートで覆った。

室内環境は温度2123℃,湿度5060%、照明時間は午前7時点灯午後7時消灯の12時間点灯とした。

結果

測定結果を平均値と標準偏差で示す。体重の増加とともに24時間摂餌量、糞量、尿量は増加した。12週齢と16週齢でやや飲水量が減少したが、その後は増加している。5例のうち1例が16週齢の時点で死亡し、25週齢後32週齢までにさらに1例が死亡した。32週齢までの期間で一時的に減少した測定値は、2例が期間内に衰弱したための影響と考えられる。

          

週齢

4W

8W 

12W

16W

25W

32W

n

  5 

5

5

4

4

3

体重(g)

35.5±1.7

78.9±2.0

100.0±5.6

107.4±8.5

124.4±11.0

126.8±6.0

摂餌量(g)

5.6±0.4

6.2±0.9

6.5±0.2

7.6±2.1

7.4±0.7

8.7±2.4

飲水量(ml)

12.8±3.0

12.2±2.5

11.1±1.1

11.3±2.4

13.5±2.5

14.3±2.1

糞量(g)

1.6±0.3

2.1±0.5

3.1±0.3

2.3±0.3

2.7±0.4

2.4±1.7

尿量(ml)

3.0±2.0

3.2±1.1

3.6±1.3

4.2±1.4

5.6±0.7

5.3±0.2

 

 

 

一般演題6

 

麻酔がラットの血糖値におよぼす影響

 

○ 遊佐寿恵、片平清昭(福島医大・実験動物研究施設)

 

【目的】 生活習慣病などの動物実験で血糖値を測定することが多い。その際、測定方法により値に差があり病態発現の程度の評価に混乱を生じることがある。そのために今回は、影響を及ぼす要因のうち採血の際の麻酔薬について検討したので報告する。

【方法】

供試動物;Jcl:Wistar(オス)14匹

測定機器;簡易血糖測定器((株)三和化学研究所製、グルテストエース)

麻酔薬と投与法;

1.ペントバルビタール(Dainabot製,NembutalR):腹腔内投与(35~40mg/kg体重)20分後に採血した。

2.エーテル(和光純薬製,試薬特級):デシケータにエーテルを含ませた布を入れておき、ラット入れてエーテルを吸入させる。保定せずに採血できる程度の麻酔深度で採血した。

3.エーテル+ペントバルビタール:デシケータにエーテルを含ませた布を入れておく。ラット入れエーテルを吸入させ動きが緩慢になったら、ペントバルビタール(35~40mg/kg体重)腹腔内投与し約5分後に採血した。

測定方法;採血の際はラットを保定、尾部静脈内に注射針を挿入し自然に漏出してくる血液をグルテストエースのセンサー部に吸引させ微量全血を検体とし測定した。いずれの麻酔薬の場合も投与前後の血糖値を比較した。

【結果】

麻酔薬投与前の血糖値を100としたときの投与後の血糖値上昇率

 

ペントバルビタール

エーテル

エーテル

+ ペントバルビタール

Mean

118.0

143.4

141.9

±SD

11.4

20.3

24.8

 

【まとめ】

麻酔薬がラットの血糖値に及ぼす影響は大きく、特にエーテルを使用した場合が顕著である。エーテルとペントバルビタールを併用した場合は、エーテルのみの場合よりエーテルの吸入量が少ないので血糖値の上昇率が低くなったものと考えられる。

 

 

 

 

 

一般演題7

 

帝王切開術を用いたMouse hepatitis virusとMycoplasma pulmonis 混合感染

マウスの移送時清浄化の試み

 

○伊藤恒賢)、尾﨑順子)、本間貞明)、長橋 武)、秦 正充)2)、三ツ口陽子)2)

鈴木浩美)、神村栄吉)、大和田一雄)3)

1)山形大・医・動物施設,2) ?Mジェー・エー・シー,3)(独)産業総合技術研究所)

 

【背景】:当施設では実験動物の譲渡や受入(移送)の場合,譲渡側で清浄化した個体を移送するか,または,譲渡側で体外受精し,得られた胚を移送してもらうようにしている。今回,当施設の実験者より,心筋に異常を来す遺伝子改変マウスを受け入れたい旨の申請書を受理し,手続きを開始したところ,譲渡側大学で飼育している遺伝子改変マウスにMouse hepatitis virus(MHV)及びMycoplasma pulmonis (Myco)の混合感染動物であることが判明した。さらに,経済的かつ技術的な面から,譲渡側大学での動物の清浄化や胚の採取が不可能とのことであった。また,維持費困窮のためマウスの処分を考えており,維持匹数が少ない状態にあり,譲渡側大学の都合により移送を早急に行って欲しい旨の連絡があった。

【目的】:当施設では譲渡側の都合に鑑み,感染した妊娠マウスの移送と施設外での子宮摘出,摘出子宮の施設内での子宮切開を行い,MHVとMyco混合感染マウスの移送と清浄化を同時に行うことを目的として,以下の方法により受け入れを行った。

【方法】:

1.帝王切開の準備

 1-1)譲渡側大学の実験者に対し胎仔提供マウス(ドナー)を準備するためにマウスの同

   居日を1日だけ指定した。(Plug未確認による交配日同定のため)

 1-2)施設側ではドナーの同居日の2日前にマウスを交配し3匹の妊娠個体(レシピエン

   ト)を準備した。(交配9匹→Plug確認7匹→妊娠6匹→3匹を手技の練習に用い

   残り3匹をレシピエントとした。)

 1-3)ドナーは4匹で帝王切開前日(妊娠18日目:P18)に受入講座の研究室に搬入され

   た。

 1-4)施設側では今回のようなケースは初めてであったため,職員には帝王切開手技を実

   際に体験してもらい,各担当の任務と配置などのリハーサルを行った。

 1-5)子宮摘出と子宮切開・胎仔蘇生は建物を別とした。距離は約50m(歩行距離)あり,

   胎仔の蘇生率を考えてドナーの淘汰から子宮切断後の最終胎仔の蘇生開始までを

   10分以内に終了するように計画した。

2.帝王切開方法

 2-1)ドナーを妊娠19日目の午前中(P19,AM)に帝王切開し,技術系職員6名にそれぞれ

   子宮摘出,運搬,子宮切開及び胎仔の蘇生の各担当を分担した。

 2-2)ドナーは受入講座の実験室で頸椎脱臼により安楽死し,ヨウ素系消毒薬(第1消毒

   槽:バイオシッド30,200倍液)で体表を洗浄し,腹部切開後に直ちに子宮頚管よ

   り子宮側を鉗子で挟み,続いて左右の子宮角を動脈クレンメで挟んだ後に子宮を腹

   腔から摘出した。

 2-3)摘出された子宮は慎重に塩素系消毒薬(第2消毒槽:アサカラックス,25倍液)に

   浸漬して血液を取り除き,新たに準備した消毒薬(第3消毒槽:アサカラックス,

   25倍液)にディスポーザブル帽子に包んで浸漬し,子宮切開場所である感染室に運

   搬した。

 2-4)感染室にて子宮を切開し,胎仔を摘出後にキムタオル上で胎仔の鼻口腔の水分を除

   去しながら自発呼吸が確認できるまで蘇生した。

 2-5)蘇生した仔マウスは37℃に暖めたホットプレート上のケージ(クリーンS,日本ク

   レア社製)内にキムタオルを敷き,その上にマウスを載せ,さらにその上にキムタ

   オルを載せて60Wの白熱球で30cm上方より暖めた。

 2-6)仔マウスの体表が充分に赤色化し,体温の上昇を確認して3匹の仮親に里仔させた。

   里仔の際は,仮親の実仔を全て取り除いた後に仮親の糞尿をまぶして導入した。

 2-7)仔マウスはドナーの腹毎に管理し,必要に応じて尾の切断により腹を識別した。

 2-8)仮親と仔マウスは安全キャビネット付き飼育装置(BESTEX,日東エアテック社製)

   に滅菌飼料(Picolab Rodent Diet 20,PMI社製)と給水ボトルにて飼育した。

 2-9)一連の作業はドナー1匹毎に行い,1腹の胎仔の蘇生が完了した時点で学内PHSを

   用いて連絡し,次のドナーの処理を開始した。

【結果】:準備した3匹のレシピエントはP19の午後からP20の間に全て分娩した。4腹のドナーからそれぞれ6~11匹の胎仔が得られた。ドナーの淘汰から胎仔の蘇生までの所要時間は6分40秒~9分8秒であり,1腹当たりの胎仔の数により時間が変動した。ドナーの子宮内には,吸収胚や発育不良の個体を多く認めた。摘出された胎仔(31匹)は3匹の仮親にそれぞれ9,11及び11匹で里仔させたが,翌日にはそれぞれ8,6,9匹の計23匹(74%)に減じた。その後,仮親の1匹が哺育を拒否したため離乳時(3週齢)までに生存した仔マウスは14匹(45%)であった。

微生物検査:正常に哺育した2匹の仮親は里仔開始から4週間経過した時点で当施設の微生物検査項目(16項目)について検査したところ全ての項目が陰性であった。念のため,8週齢以降の仔マウス2匹に対し16項目を検査し,残りの12匹についてはモニライザ?「Aを用いてMHV,HVJ,Myco及びTyzzerの抗体を検査したところ,どちらも全て陰性であった。

【考察】:今回の帝王切開由来胎仔の離乳時生存率は,帝王切開手技よりも仮親の哺育能が関与したと思われた。従って胎仔の生存率を高めるには仮親の予備を多く保有することが必要と思われた。帝王切開による清浄化は子宮切開時における胎盤からの微生物感染の危険性が指摘されており,施術には注意を要するが,今回のようなケースにおいては極めて短期間にかつ移送と清浄化が同時に行える有効な手段であった。さらに,本法は短期間の練習により他の動物種に対しても容易に応用可能と思われた。

 

 

 

一般講演8

 

129/Sv系統マウスのPZDを用いた体外受精の検討

 

◯ 神村栄吉1)、秦 正充1)2)1)山形大・医・動物施設、2)?Mジェー・エー・シー)

 

背景:マウスの系統保存は今や初期胚の凍結による凍結保存が主流となっている。演者らの施設においても、成体で系統維持していたマウスを順次凍結保存に切り替えてきた。凍結保存は中潟らの方法に準じて行い、体外受精により得られた2細胞期胚をDAP213を耐凍剤として用いたガラス化法により凍結している。この際、129/Sv系統は体外受精率が非常に低く、凍結保存に必要な胚数を確保することが非常に困難であった。

 

目的:体外受精率が低い129/SvマウスにPZDPartial Zona Dissection)を行い、体外受精率の改善を試みた。

 

材料と方法:採卵用には2~45週齢の129/Sv雌マウスを用いた。過排卵処理により未受精卵を採卵し、ヒアルロニダーセ処理により卵丘細胞を除去した。0.3M S/PB1(BSA-)溶液の100mドロップに卵を移し、卵がシャーレのそこに付着したのを確認してから、ミネラルオイルで覆った。30Gの注射針を1ml用注射筒に装着し、針部分を約30度程折り曲げた。実体顕微鏡下でこの針を用いて卵の透明体を切開した。0.3M S/PB1(BSA)溶液を20ml添加し卵をシャーレの底より剥がした。HTFで卵を洗浄し、200mlHTFドロップに卵を移し、雄より採取し前培養しておいた精子を添加して体外受精を行った。37℃のCO2インキュベーター内で約24時間培養し、2細胞期胚数をカウントした。

 

結果:PZDを行わない場合の129/Sv系統マウスの体外受精率は、11.2%であったのに対し、PZD処置を行った場合の体外受精率は52.6%であり、体外受精率の改善が見られた。

 

考察:PZDは体外受精率を改善するための、有効な方法の一つである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一般演題9

 

東北大学大学院医学系研究科附属動物実験施設における

マウス胚操作技術業務

 

○西尾啓輔1)、須田博美2)、木伏智美1)、宍戸公信3)、岡村匡史4)、笠井憲雪1)

1)東北大院・医・動物実験施設、2)医・創生応用医学研究センター、3)?Mジェー・エー・シー、4)国際医療センター研・ヒト型動物開発)

 

【目的】現在、動物実験において特定の微生物に感染しているマウスの使用は、たとえ症状を示していなくても研究結果に影響を及ぼす。研究するにあたりSPF(Specific Pathogen Free)となっているマウスの使用は重要となってくる。また、マウス胚凍結保存技術の浸透により凍結胚の授受は容易になり、凍結胚融解の技術は不可欠となっている。そこでマウス胚操作技術を駆使して研究者の要望に応えるべく微生物クリーニング業務および凍結胚融解業務を新たに立ち上げた。本研究会では昨年、本施設で立ち上げたマウス胚凍結保存サービスのその後の経過と共に成績について報告する。

【材料および方法】微生物クリーニングは帝王切開法および受精卵移植法で行った。帝王切開法は提供雌マウスを雄マウスと同居させ翌日プラグを確認し(プラグを確認した日を1日目とする)、19日目に帝王切開で仔を摘出し里親につけた。受精卵移植法は提供雄マウスに過排卵処理した提供雌マウスを使用して体外受精もしくは自然交配で無菌的に2細胞期胚を採取し偽妊娠マウスに移植した。両者とも移植後はアイソレーターで飼育し、離乳後親マウスを微生物検査に提出した。微生物検査項目すべて陰性の場合は微生物クリーニング終了とした。凍結胚融解は凍結胚の融解方法に従い融解し、偽妊娠マウスに移植した。移植後アイソレーターで飼育した。産仔を離乳できる週齢にした時点で凍結胚融解を終了とした。マウス胚凍結保存に関しては昨年と同様の方法で行った。

【結果】微生物クリーニングの依頼は7系統あり、7系統とも本施設の微生物検査項目すべて陰性だった。凍結胚融解業務の依頼は2系統あり、ともに産仔を得た。マウス胚凍結保存業務の依頼は8系統あり、2系統を凍結完了し、残りの6系統は現在発生率検定の作業中である。今後は依頼件数を増やし、どの様な条件下でも産仔数を安定できる技術面の向上を目指したい。

 

 

一般演題10

 

東北支部アンケート調査の結果報告について

 

井上吉浩(東北支部長)

 

 平成16年秋に東北支部会員を対象にアンケート調査を行った。その集計結果を報告する。

本調査の目的は、本協会においては実験動物技術者の資質向上、社会的地位の確立を目指しているが、それには支部の活動が重要なウェイトを占めるものと考えられる。周知の通り、東北支部は会員構成として大学関係者が大半を占めているのが特徴であるが、ブリーダーや実験動物用飼料・関連器材を扱う会社の会員、製薬企業関係の会員の方も少ないながらも入会している。会員個々の置かれた状況や意識にも違いがあると考えられ、また、業種や立場の違いからも支部に対する要望や期待も様々であると推察される。よって、会員の皆様からの忌憚のないご意見を集積し、その声を支部活動にどのように反映させ、どうすれば有益で実効のある事業活動を展開していけるのか、その指標とするために調査を行ったものである。

アンケート調査の結果、会員54名中32名(男性16名、女性16名)の会員から回答があった。その内の約70%が技術職員で占められたが、それ以外の職種・職域の会員からも回答が寄せられた。集計結果の詳細は講演で紹介するが、講演会や実技講習会などへの興味深い企画の提案や数多くの意見が寄せられた。これらの意見を参考にし、今後の支部活動に活かしていきたいと考える。

協会・支部の事業活動に参加して専門の知識や技術を研修することも無論大事なことではあるが、それにもまして会員相互の情報交換や職域間の垣根を超えたコミュニケーションも個々の仕事をしていく上で非常に重要なことと考えられる。近年、女性会員が増加しているものの支部会員数は依然として少人数ではあります。しかし、東北支部の伝統とも言える「まとまりの良さ」・「アットホームな運営」を今後も継承し、多様化している要望に前向きに対応していきたいと考える。