第38回日本実験動物技術者協会長崎総会
実験動物学会との合同大会を終えて

渡辺 洋二(日本実験動物技術者協会 九州支部長)


 長崎総会がまずは経済的に無事に終了しましてほっとしているところです。合同大会が多方面からの多額の資金支援によって成り立つことを目の当たりにできましたことは感謝の一語に尽きますが、支部としましてはまたとない大会運営経験になり、大変ありがたく思っております。今までに無い100%の合同開催は、それを支部として指向して実施したわけではありません。ただ両会で話し合いを進める中で必然的に話題に上った「大会長が同じ職場であることをどのように活用すべきか」という点に端を発し、学会の要請を完全に断りきれなかった理由として結果論的には「これまでに実施されていない開催形式」でやってみたい、また「どのような結果が生まれるだろうか」という気持ちがあったために、開催形式を大幅に変更したのだと振り返ることができます。

 開催期日と曜日では協会会員にはご不便と経済的な負担をおかけしたことと思います。一方で、合同開催によって地方の支部でありながら国際性がある大きな規模の学会を体験できたことは事実です。今後長崎のような稀なチャンスがもし巡ってきたならば、その間に協会ならびに支部として蓄えた力を発揮する場と考えて、新たなチャレンジを指向して良いのではないかと考えています

 以下長崎大会の事実概要を羅列しました。当日は考えるべき点、反省すべき点を含めてお話させていただきます。大会へのご協力、本当にありがとうございました。

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【大会名称】日本実験動物科学・技術ながさき2004。科学は学会、技術は協会を示し、「・」は独立と協力の意味

【主催(大会長)】日本実験動物技術者協会九州支部(支部長 渡辺 洋二)。日本実験動物学会(長崎大学医学部 佐藤 浩)◎アジア実験動物学会連合 AFLAS(実験動物学会理事長 菅野 茂)は開催の約半年前に立ち上がり、実質的に長崎大会では学会の一組織として合流されたと感じています。長崎大会に国際性を盛り込んでいただき、貢献度は大きかったと考えます。2年後の韓国開催からは国際学会として独立運営とのことです。

【開催形式】2団体の総会と一般演題を除く全ての会計・企画・運営・事務局を合同・一本化し、多数決によらず話し合いで詰めていく。当初は3日・2日独立会計開催で一部共同企画としてスタートしましたが、1年数カ月前になって大幅変更しました。

【申し合わせ】 両大会長は「覚書」を作成、署名、捺印し一通ずつ保管した。この中で、全ての会場に両会の参加者が同席していることを念頭に、企画・発表・講演・司会・進行が行われるように配慮することとし、その一例として外国語の発表に際しては、通訳・翻訳要旨の配布を求めた。その一方で、協会の発表に際しても、タイトル・演者名・所属機関名の英語表記を求めた。結果として、「配慮」は全員にメール等で通達した。同時通訳を付けることは経済的・人材的な無理があるということから対訳集を別冊として発行した。

【大会期日】2004年5月20・21・22日(木・金・土)の3日間に企画を組むのは初めてで、通常の土日開催からすると参加者には非常な無理を強いていると感じました。

【参加費】事前登録を前提にして考えれば、3日間参加して参加費8000円はお得とも言えますが、大会期間が延びていることを考えれば、かなりの負担増になったと考えます。

【企画】両会で持ち寄った企画から重複を除いて企画しました。教育セミナーとワークショップも統合し大会で運営し、AFLASも合同企画とし、技術者としての企画を盛り込むことができました。一手に押し付けられた佐加良理事には大変ご苦労いただきました。

学会理事長を含め数名の方から大会期間中にもクレームをいただきましたが、企画が同時進行していて参加することができないとのご意見でした。両会で3日+2日の本来都合5日間で企画すべきボリュームを3日間に詰め込んでしまったのだと反省しております。[シンポジストxシンポジスト]、[シンポジストx一般演題実験責任者]がバッティングするトラブルが各1件ずつ事前に判明しましたが、どうにも解消できませんでした。

【協会総会】両会の総会開催時は開始から1時間程度は他の企画を組まないことを申し合わせました。顕彰・技術功労賞の先生方が全員ご来場くださいましたので何よりでした。業界アワード・グッドデザイン1本・ナイスポスター2本・デビュー賞(JAEATマグカップ)も継続しました。

【一般演題】UMINシステムを利用しネット上で募集しました。プリントアウトを送付してもらう従来の応募方法も継続しましたが1件もありませんでした。オーラル44、ポスター28(14x2:前半後半)演題それぞれ希望通りに振り分けることができました。小原理事長にはプログラム委員をお願いしました。ご苦労様でした。

【懇親会】野外でしたので天気が我慢してくれて何よりでした。予想を上回る600名以上の参加者と食欲に、食事が足りませんでした。男性中心の会ということでアルコールに比重をおいたのが誤算でした。グラバー園の貸し出し料金が安い一方で、食事のケータリングに保冷車等の手配費用がかなり加算されます。

【関連集会】例年通り、会期前日に多くの関連集会が開催されました。一部会期中に開催されましたが、企画の空白の部分を埋めた形で、運営上の支障は全くありませんでした。

【番外企画】最終22日から1泊で、40Km程佐賀県よりの多良岳山腹の少年自然の家にて、「バイオリソースとしての野生齧歯類:体験実習版」を土屋先生のご指導+九州支部の支援で実施しました。定員20名がほぼ埋まり、楽しく体験学習ができ好評でした。

【器材展示】本来コンサート会場で使い勝手の悪いところでしたが実器協のご支援で120コマ程の沢山のブースを関連企業に割り当てていただき、展示料金の中から多額の寄付をいただきました。一方で、これほど多額の予算でしか大会が運営できないとしたら、今後もし合同大会が開催できる機会があったとしても大きな問題が残ります。全てを合算すると一日あたり1000万円以上の予算でした。

【ランチョンセミナー】 3日間で9企画が開催されました。中日の希望が多く、会場の収容数などの事前調整が大変な割りには、大会収入は会場使用料ほどですが、企画は主催企業にお任せで、会場周辺の食事できる場所が少なかったので助かりましたし好評でした。

【ウェルカムパーティー】会期前日の夕方、長崎港遊覧貸し切り船上、実費徴収で実施しました。

【古写真展示】当地長崎の歴史紹介と講演を長崎大学から企画しました。通路での写真展は私がヘッドで準備しましたので、ウェルカムパーティーには乗船できませんでした。【OTO】学会運営支援企業 オフィステイクワン(OTO 名古屋)が大会ホームページ・UMIN演題登録申請等、趣意書・プログラム・講演要旨集・ポスター等の作成・発送、ランチョンセミナー調整、会場のセット、ネームカードの貸し出し、看板制作、当日の運営全体の把握と調整を担当しました。大会総収入約3500万円の10%程度の経費がかかりました。プログラム集にも広告を募集してくれて、実際に掲載もできました。講演要旨集の印刷はいくつも会社を当たってみるもので、30-40%と大幅な差がありました。

【参加者】有料参加者1014名。関連集会に参加される方も会員扱いで参加していただきました。器材展示のための関係者は参加費不要としましたので、数字に入っていません。スタッフは全員全てを支払っております。支部から何らかの助成を考えています。

【助成金】(社)長崎国際観光コンベンション協会からは市内ホテルが大会期間中に延べ2000名が宿泊したことを証明してくれたので200万円の補助が出ました。参加票に宿泊欄を作って、しっかり記入していただいたのはこの目的です。

【謝礼金】長崎大会から払ったのは、特別講演者への謝礼金は一人10万円+旅費宿泊。韓国からのパクさんは旅費宿泊込みで10万円。非会員のシンポジストに2万円。会員のシンポジストには記念品(マウスパッド)のみです。

【宿泊・航空券】宿泊・航空券    日本旅行長崎支店にチケット・宿泊の確保を一任し案内に掲載。懇親会会場までのバスを無料で提供していただきました。

【警備】浦上警察署に海外からの動物実験反対運動家の動向情報が入るようにお願いしました。会場での警備は特にはなかったと思います。

【会計】大会会計に残金があると課税されます。残ったからといって多額の寄付も課税されます。九州支部への返金と他団体への寄付で程よく収まったようです。

【事務局】会計の極詳細は両大会長にも明らかではありません。会計の収支詳細の報告はまだありませんが、現在税理士の手にある状況と思います。事務局長の信念に基づく独立性の高い事務局運営でしたので、事務局が保有する情報を大会長が使用できないという問題が生じました。