当施設で経験したMHVの発生

松田幸久,河原崎哲,石郷岡清基,中村洋子,鈴木美帆子,助川康子
(秋田大学バイオサイエンス教育・研究センター動物実験部門)


 平成15年5月の微生物モニタリングにより当施設で飼育している遺伝子組換えマウス(GMマウス)の一部がMHVに汚染していることが判明した。そのため感染マウスの隔離,飼育室の消毒,帝王切開によるクリーン化を行い,約1年をかけてほぼ復旧した。今回は,発生から復旧までの経過をお話しする。

経過報告

平成15年5月2日

 市販の微生物検査用ELISAキット(モニライザ)で微生物学的モニタリングを行ったところ,SPFTgマウス室(2)のマウスにMHV抗体陽性の反応が出た。

5月3日

 汚染拡大を防止するためにSPF区域利用者に対して以下の注意を喚起した。
  1. 使用済みのケージ類は新たに用意した専用コンテナーに収容して飼育室から搬出する(施設側で滅菌後,通常の洗浄作業を行う)。
  2. SPF区域のマウス飼育室に出入りした場合には,他のマウス室に出入りしない。
  3. SPF区域の飼育室から生きたマウスを搬出する際には,ケージをビニール袋などで包んで持ち出す。
5月6日

 間接蛍光抗体法(IFA)による確認のため施設の全マウス室から得た血清を実験動物中央研究所(実中研)に送付した。その結果,SPFTgマウス室(1)と(2)のマウスが抗体陽性で,他室は陰性であることが確認された。

5月19日

 全マウス室の排気ダクトよりダストを回収し,PCRによるゲノム検出のために長崎大学に送付した。その結果,SPFTgマウス室(2)からはMHVのゲノムが検出されたが,SPFTgマウス室(1)も含め他のSPFマウス室からはMHVのゲノムが検出されなかった。

5月20日

 運営委員会を開催し以下のことを取り決めた。
  1. 感染マウスを施設外に移動し,隔離する。
  2. 感染動物は帝王切開によるクリーンアップ後SPF区域に搬入する
  3. それまでに感染飼育室の消毒,滅菌を完了する。
5月28日

 利用者会議を開催し,5月20日の運営委員会で取り決めたことを報告した。

6月3〜4日

 SPFTgマウス室(1)および(2)のマウスを機器センターに移動した。

6月11〜12日

 マウス室(1)および(2)の消毒を行った(外注業者による)。

7月3日

 帝王切開によるクリーン化を施設の感染実験室で開始した。

平成16年4月2日

 機器センターでのMHV汚染マウスの飼育を終了した。

 機器センターに隔離した汚染マウスの飼育は講座の職員が行い,それらの職員の施設への出入りを制限した。
他の研究機関から搬入するマウスは証明書にてSPFを確認した上で検疫室にて検疫を実施している。その後抗体陽性のマウスは認められず現在に至っている。