ラットのスメア観察による性周期の判定

ラットのスメア観察による性周期の判定

〇葛西律子、馬場秀明、今井信子、三上寧士、八木澤誠
                   (弘前大学医学部附属動物実験施設)


はじめに

 昨年5月、当施設ラット飼育室で一講座が継代維持している、ヒロサキヘアレスラット(HHR)およびその基となったSDラットに呼吸音の異常なラットがいることに気付いた。マウス、ラットでは発生する感染症の75%以上が呼吸器症であるといわれていることから感染症を疑い、精査したらマイコプラズマに汚染していることが確認された。当施設では3ヶ月毎にモニター動物による抗体検査を行っており、4月の検査では感染症の汚染は確認されていない。

 HHRは約20年前に弘前大学医学部でSDラットに突然変異で生まれ、それ以来継代維持している系統であり、絶やすことが出来ないため、私ども施設職員で子宮切断、里親法によるクリーン化を計画した。

 今回の実験の目的は、帝王切開するラットの出産予定日を手術予定日の次日とし、手術予定日の2日前に里親ラットを出産させなければならないため、帝王切開ラットの交配適期を予測し、その3日前に里親ラットを交配させる必要がある。その前段階として、スメア観察による交配日の特定を、施設職員全員で勉強したのでその概要について紹介する。

材料および方法

 市販のSD21匹を購入し、定法に従ってギムザ染色を施し観察した。

結果および考察

 ラットの性周期は発情前期、発情期、発情後期、休止期の4期に分かれ、これが定期的に廻っており、発情前期の終わりから発情期にかけて雄と交配させることにより妊娠させることが出来る。発情前期のスメアを診たその日の夕方雄と同居させ、翌日精子を確認し交配を確認した。ほとんどは成功したが中には成功しない例もあった。ラットの発情前期と発情期はそれぞれ約12時間と短時間なので、交配適期を一日一回のスメア観察で判定するのは簡単ではなかった。できれば朝と夕方の2回スメアを採取し、鏡検するのが望ましい。

 その他に性周期のはっきりしないラットが21匹中7匹いた。これらラットのスメアは何れも染色後に青いゼリー状のものが見られた。ゼリー状が見られるラットは休止期が4〜5日と続き、急に発情前期となるため交配適期の予測をたてるのに苦労した。

 ラットの性周期は短期間で廻り、スメア像もはっきりしているので簡単に判定できるのではないかと取り組んだが、なかなか教科書通りにはいかず、交配適期の予測をするのに苦労した。