実験動物施設での害虫(侵入・駆除)対策について
ーゴキブリ・蚊等の生態、習性、駆除法について
効果的な防除プログラムの開発ー

黒田 芳弘(アース環境サービス(株)開発部)

 実験動物施設は動物にとってストレスがかからない環境、即ち「適切な温湿度、十分な餌、天敵不在」が確保されている。このような環境は、今回害虫として取り上げる昆虫にとっても快適な生息環境になっている。殺虫剤の効果を評価するための試験用昆虫の飼育環境に酷似しているほどである。環境が昆虫の成育にとっても適当な環境である以上、その防除は駆除が中心とならざるを得ないが、駆除に効果的な揮発性の殺虫剤は実験動物への影響から用いることができない。以上の条件下で効果的に働く防除プログラムの開発について、以下の観点から解説する。
  1. 問題となる昆虫(害虫)の生態
    ・ゴキブリ類、カ類、ハエ類、シバンムシ、メイガ等の貯穀害虫
  2. 実験動物施設への侵入と繁殖
    ・施設の構造 ・立地環境 ・進入経路 ・繁殖
  3. 駆除・防除の方法
    ・昆虫捕獲による駆除 ・サニテーションによる駆除と防除
    ・食毒剤による駆除 ・昆虫成長抑制剤の効果的な活用 ・照明等UV線の制御
  4. GLPに相応しい防除プログラムの開発手順
     危機管理プログラム開発と同様に、まず問題となる昆虫をはっきりさせ、それぞれの防除の方策を立案するところから始める。従来から侵入や発生の原因と対策が確立している昆虫については継続して実行する。原因が不明確である、或いは対策がはっきりしないものについては、学術的な専門家の知識も借りる必要がある。
     防除の方針を明確にした上で、改善活動の計画を立てる。計画には活動に携わる従事者の役割分担を含めておくことが重要である。教育を含んだコミュニケーションの場を設定することも効果的な場合がある。さらに計画自体の定期的な検証の実施を予め定めておくことが重要である。
     どのような対策・手法にも効用と限界があるのと同様に、種々の防虫対策手法・方策にもそれぞれの特性に起因する効用と限界がある。それぞれの限界を理解した上で効用を組み合わせた総合的な対策が投資対効果の高い防虫プログラムの開発につながる。最終的には何故制御できているのかが対外的に説明・証明できる保証型の総合的な防虫プログラムが求められる。この防虫プログラムの開発によって、自らも納得できる防虫管理が実現する。

平成15年度奥羽・東北支部合同勉強会