Flexor EMGを用いた血管痛の定量的評価法

○安藤隆一郎、渡辺千寿子(東北薬科大学実験動物センター)

【目的】われわれは既に、意識下の動物への血管内発痛物質投与による啼声反応を仮性血管痛反応モデルとして開発してきたが、今回は、麻酔下の動物を用いて痛み刺激に対する運動性防御反射の一つである屈曲反射を指標とした新たな血管痛評価法を開発したのでその有用性について報告する。

【方法】実験には雄性Sprague Dawleyラット(日本SLC、280〜340g)を使用し、一定保温下で実施した。麻酔はウレタン(1.3g/kg, i.p.)を使用し、ヒフの切開部分は5%リドカインによる局所麻酔後に行った。発痛物質投与のためのカニューレは、後肢大腿動脈の側枝より逆行性に挿入し、脊髄クモ膜下腔内投与用のカニューレはL3-L4間を穿孔後、尾側へ約1B挿入した。屈曲反射の測定は、血管カニューレ挿入側の屈筋(大腿二頭筋、半腱様筋)からの同芯型針電極によるEMG導出により行った。なお屈曲反射の定量的観察は、導出したEMGの積分値を、また定性的観察にはその積分図を用いた。

【結果】発痛物質のカプサイシン(CAP, 0.05-0.5μg)を動脈内へ投与すると屈曲反射が観察され、その反応は用量依存的であった。また、後肢皮膚へのpinching刺激も同様に屈曲反射を引き起こした。これらの反応はモルヒネ(5mg/kg, s.c.)により有意に抑制され、この抑制作用はナロキソン(1.5mg/kg, s.c.)により拮抗された。また脊髄クモ膜下腔内へのリドカイン(500μg/10μl)は両者の反応を一過性に抑制したが、動脈内へのプロカイン(2%, 200μl)投与はCAPの反応のみ抑制した。さらにCAP受容体(VR1)の特異的拮抗薬であるカプサゼピン(20μg)の動脈内投与はCAPの反応のみ抑制し、pinching刺激による反応にはほとんど影響を与えなかった。

以上の結果から、本評価法は新たな血管痛モデルとして有用であることが示された。

平成15年度奥羽・東北支部合同勉強会