マウスの個体識別法としてイヤータグを用いた終生飼育試験の経験例(中間報告)
○一戸 一晃1,高橋 正敏2 1(財)環境科学技術研究所,2東北ニュークリア(株)
当研究所では,わずかの放射線が生物に与える影響を見るために,平成7年度より,1回に雄100匹,雌100匹の計200匹を購入し,照射群3群と非照射対照群の計4群に分けて実験を開始しました。平成10年に最後の第20回目の入荷群を実験に供し,総数4000匹の寿命試験の実験となりました。当初,動物飼育は,経験年数1年のスタッフ1名と未経験者4名の計5名に加えて,微生物管理担当者1名,施設運営管理者1名の計7名で開始しました。
マウスの永久識別法は,耳パンチ方式,または耳パンチと飼育ケージ番号を組み合わせた方法が一般的と思われますが,当研究所では,@飼育スタッフの大部分が未経験者であるため正確に耳パンチが実施できないA一般症状観察,体重測定等の際に個体識別に長時間を要するB複数の飼育ケージより,マウスが脱走した場合に個体識別が困難となるC地震(実験開始1年前に「三陸はるか沖地震」を経験)等により飼育架台より複数のケージが落下した場合,耳パンチだけでは個体識別が困難となる等の理由で,左耳にイヤータグを装着して終生飼育することに決定しました。
今回は,第1回から第5回目入荷群の非照射対照群雌雄各100匹,計200匹に関して,その使用経験を紹介致します。
[材料と方法]
動 物:8週齢マウス(系統;B6C3F1/Nrs)
雄100匹(体重:平均値±標準偏差=27.8±1.80;23.26〜32.21g)
雌100匹(体重:平均値±標準偏差=20.24±1.35;17.49〜27.18g)
イヤーダグ:重量;0.17g,材質;モネル合金
(販売元;(株)夏目製作所,製造元;National Band & Tag Co.)
装着機:専用ペンチ(販売元;(株)夏目製作所,製造元;National Band &Tag Co.)
装着方法:
@2人1組で,保定者が片手でマウスの頚背部の皮膚をつかみ,空いた手で左耳の先端を軽く引っ張る。
A装着者は,イヤータグの刻印番号を確認した後,専用ペンチにイヤータグを取り付け,マウスの左耳に装着する。
B一般症状観察で,イヤータグの脱落を確認したら,速やかに予備のものを装着する(数回脱落して装着不能となった個体は耳パンチ等を施す)
飼育方法:雌雄別に5匹/1ケージで終生飼育
[結 果]
平均寿命(日:平均値±標準偏差)
雄マウス:908±169(360〜1225日),雌マウス:844±149(137〜1275日)
装着結果
@終生イヤータグが脱落しなかった個体
雄マウス:82匹,雌マウス:80匹
A1度イヤータグが脱落した後,再度装着した個体
雄マウス:7匹,雌マウス:11匹
[まとめ]
8週齢時でイヤータグを装着した場合,雌雄供に約8割の個体で,終生イヤータグが装着されていることがわかった。本総会では,イヤータグを装着したマウスの一般症状,長期間の装着で刻印番号が不明になった症例等を報告する。
「本記載事項は,青森県からの受託事業により得られた成果の一部である」