環境研におけるマウスの微生物学的モニタリング

一本部共催実技講習会と比較して一

財団法人環境科学技術研究所
企画・管理部技術係一戸一晃



 購入動物を介した病原体のバリア施設内への侵入防止と、バリアをすり抜けて飼育動物に感染した病原体を早期に発見し飼育集団への拡大を防ぐために、購入動物の検疫とバリア内飼育動物の微生物検査はバリア施設管理にとって必須の事項である。ここで、問題となるのは、「バリア区域(放射線照射・生涯飼育試験等実施)にとって好ましくない病原体(speciflcpathogen)は何なのか」である。
 低線量生物影響実験棟では、?@マウスにとって明らかな病原性微生物?A潜在感染を起こしマウスにストレスがかかると病気を引き起こす微生物?B病原性はほとんど無いもののマウスの清浄度の指標となるような微生物を検査対象に含めることとした。しかし、マウスに対し明らかな病原性を持つものでも、わが国の実験動物から、過去数十年間、検出された報告がない微生物は検査対象から除外した。
 このような観点から、当施設では、文献および実際にマウスの病原微生物検査を行っている研究者(技術者)の意見を参考に、環境研がおかれた諸条件(人的、施設・設備面、経済面、協力機関(放医研)面等〉を加味して、検査対象微生物とその検査方法を以下の様に定めた。

SPF指定病原体 検査材料 検 査 方 法
検疫・モニターマウス
Pseudomonas aeruginosa 盲腸内容 NAC液体培地(栄研:濾過)48時間培養後
上清をNAC寒天培地(栄研)で48時間培養
Salmonella spp 盲腸内容 DHL寒天培地(栄研)で24時間培養
Pasteurella pneumotropica 気管スワブ 馬血液寒天培地(馬血液(三共)+Tryptic
Soy agar(DIFC0))で48時間培養
E. coli 0115acKB 盲腸内容 DHL寒天培地(栄研)で24時間培養
Corynebacterium kutscheri 口腔スワブ
盲腸内容
血清
CK寒天培地(自家製)で48時間培養
CK寒天培地(自家製)で48時間培養
凝集反応法(デンカ生研)
Tyzzer's organism 血清 EIA法(デンカ生研/実中研)
Mycoplasma spp. 鼻・気管スワブ
血清
Chanockの培地(自家製)で1週間培養
EIA法(デンカ生研/実中研)
Sendai virus 血清 EIA法(デンカ生研/実中研)
Mouse hepatitis virus 血清 EIA法(デンカ生研/実中研)
Hexamita muris 十二指腸内容 直接鏡検(x100:生食で希釈せず)
Giardia muris 十二指腸内容 直接鏡検(x100:生食で希釈せず)
内・外寄生虫 表皮・盲腸内容 剖検・鏡検
実験マウス
Pseudomonas aeruginosa 糞便 NAC液体培地(栄研:濾過)48時間培養後
上清をNAC寒天培地(栄研)で48時間培養


 本総会では、採材方法等を含め、平成9年8月22日に弘前大学で開催された本部共催実技講習会(テーマ:微生物学的モニタリング)と比較して、報告を行う。


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