実験用ブタの寄生虫学的検索
追留 吉雄・石郷岡 清基・松田 幸久(秋田大学・医・動物施設)
医学研究の目的で動物実験に主として用いられているブタは家畜用(食肉用)の大ヨーク種,ランドレース種やそれらの交雑種の仔ブタ(通称ベビーブタで2〜3ヶ月齢の体重15〜20kg)か,あるいは実験用に開発された種々のミニブタ(SPFを含む)である。
当施設では,近年仔ブタの需要が増加傾向にあることから,施設に搬入後必須として寄生虫学的検査を実施している。今回はその成績について紹介する。
【材料及び方法】
肝臓移植実験の目的で平成10年6月〜11年3月の期間に近郊の畜産農家で食肉用として繁殖している仔ブタ(体重約20kg)30匹と中外製薬研究所(C.S.K)で開発繁殖しているSPFミニブタ(体重約20kg>)5匹の合計35匹である。
検査方法は搬入後ホルマリン・エーテルによるMGL法で実施した。
【成績及び考察】
家畜用ブタ30匹と対象としてSPFミニブタ5匹の成績は表に示した。それによると,家畜用ブタでは,鞭虫が最も多く5例(17%),縮小条虫とバランチジウムが各々3例(10%)で以下毛様線虫とコクシジウムが各々2例(7%)であった。
また一過性と思われる土壌線虫が3例であった。全体では30例中18例陽性の60%から寄生虫卵が検出された。
一方,対照であるミニブタ5例からは寄生虫卵は全く検出されていない。
これらの成績から特に興味のあることは人獣共通感染症とされている縮小条虫やバランチジウムが検出されたことで実験者はもちろんのこと,飼育者も充分気をつける必要があると思われる。また,SPFミニブタを実験研究等々への使用を進めるが,一匹当たりの価格が高いなどの問題点もある。
実験用ブタの寄生虫学的成績
|
鞭虫 |
毛様線虫 |
縮小条虫 |
コクシジウム |
バランチジウム |
土壌線虫 |
(−) |
合計 |
仔ブタ (CONV) |
5 (17) |
2 (7) |
3 (10) |
2 (7) |
3 (10) |
3* (10) |
12 (40) |
30 (60) |
ミニブタ (SPF) |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
5 |
5 |
*寄生性ではない