電子顕微鏡で見るミクロの世界

川村公一(秋田大学医学部病理学第二講座)

 人間の眼は精密にできており、焦点を瞬時に合わせることができるが、遠くにあるものやごく小さいものを把握するのには限界があり、それらを見るための道具として、望遠鏡や顕微鏡がある。天体望遠鏡で夜空の星を観察するのに対して、ミクロの世界では顕微鏡があり、身の廻りを拡大してみると普段気がつかない遠大な細胞の世界が広がっている。

 顕微鏡の性能で二つの点を見分けられる最小の距離を示す分解能がある。これは光源の波長と比例するので、分解能をよくするためには可視光線よりも紫外線を、さらに電子線を用いればよいことになる。電子線が1897年に発見され、1939年に世界で初めて電子顕微鏡(電顕)がシーメンス社(独)から販売された。現在は電顕で観察しても論文として価値のある新知見も少ないので、電顕は役に立たない機器であると危惧する研究者もいる。しかしミクロの検索に光学顕微鏡が無くならないように、更に大 きい拡大の得れる電顕は細胞の世界の検索には不可欠の機器と考えている。電顕はお宝としての特別な機器ではなくルーチンで使うものである。

 今回の奥羽支部研修会では電顕の試料の作り方を中心にして、ラットの心筋梗塞、火傷による肉芽組織の血管新生、ウサギの骨格筋の血管新生の様子を超ミクロの世界から紹介したいと考えています。現在は病院の診断機器は自動化されていますが、電顕の標本作製は手作業の要素が多く職人芸の世界です。その一端をわかって頂けると嬉しく思います。



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