半年近くアメリカで暮らしてきた。帰国してから見るもの聞くもの気にくわず,“戦後日本の構造のつけが回ってきた”などと,したり顔で不平を言っていた。回りの人こそ迷惑したであろう。 日本の問題はさておき,これまでの生き方のつけが自分自身にも回ってきたようだ。この頃どうにも生き心地が悪い。天命を聞く年に近づいたが,未だ不惑の域にも達しない。一度,寺に籠って座禅でもしてみようかとも考えた。しかし、そんな時間の許される職場でもない。そこで書籍から仏の教えを学ぶことにした。 人生は苦である。これが仏教の第一真理だという。これまでの人生“楽転倒”していたようだ。また,教えには
どれも守れそうにないが,不殺生戒が医学の教育・研究の場にいる獣医師には最も厳しい注文である。しかし,生業のためなら殺生も許されるとも仏は説いている。 “色即是空。空即是色。”を“我思う故に我あり”と自分なりに解釈し,また仏の慈悲を頼りに,“犠牲となる動物への感謝の念を忘れず世のため人のために尽くすのが我が天職”と合点する。 この気持ちで一年を過ごせたなら,少しは生き心地も良くなるだろうか。 平成9年正月 |
![]() シカゴ大学にて 病理学講座のProf. Glagovと 1996年冬 |