黄河のほとりへ(4)


  翌朝は生憎の雨。朝食後にホテルから蘭州市生物製品薬品研究所へと向かう。蘭州の観光だけして帰るわけにもいかず、旅程の半分は講演や 施設見学など真面目に仕事をする。
私の勤務する動物施設の紹介と現在研究している大型ウサギの実験動物化の話をしたが,姉妹都市秋田の観光案内が一番受けたようである。こ の研究所では破傷風に対する抗血清をはじめ各種のワクチンなど約100種類の生物製剤が製造され,製品の開発,応用,品質向上などの研究も 行われている。電気以外飲料水やガス,蒸気を自給自足しており、年間に80万匹のマウス,ラット,ウサギ,モルモットなどの実験動物が生産 されているという。

 我々の施設では年間にせいぜい1万匹程度の動物しか使っていないため,その数の多さに驚かされた。中国は過剰な人口を 抱えているため,多くの人間が職にあり就くためには日本では一人で足りる仕事を何人かで行うということになるようだ。この研究所でも約130人の 職員が働いており,動物の飼育に携わる職員の数も多い。彼らは忠実に自分達の仕事を果たしているために生産する動物の数が増えるのであろう。 その動物の全てが実験や生物製剤の製造のために使われているか否かは定かではない。医食同源の国では,その一部は薬としてではなく食料として 職員の体の中に収まっているのかもしれない。

 蘭州市では生物製品薬品研究所の他に蘭州医学院を見学した。この大学の動物施設では近々SPF動物の生産を開始する予定であり、 孫副教授が積極的に日本の技術を取り入れ、文献や図面を見ながら手作りで飼育管理機器を作製していた。ここでは売れる商品を作っている蘭州市生物製品薬 品研究所とは異なり経済活動がまだ軌道に乗っていないため、適切な飼育管理機器を金を出して購入することは困難のようである。

黄河のほとりへ(5)