遺伝子組換え実験の規制に関する説明会への参加報告

秋田大学医学部附属動物実験施設 松田幸久

 生物多様性条約の下に遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律が平成15年6月18日に制定されております。
 この法律の円滑な実施を確保するために平成15年11月28日に文部科学省から研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令(案)が出され、これまでに省令案に対する意見募集がなされてきました。そしてこの省令案がいよいよ平成16年2月19日から施行されることとなります。

 運用に先立ち「遺伝子組換え実験の規制に関する説明会」が上記要領で開かれ、それに参加してきました。ここでは当動物実験施設が係わるTg マウスと KO マウスの拡散防止措置に関して報告します。

法制化にともなう主な変更点

KOマウスあるいはTgマウスに対する拡散防止措置 について
実験分類

遺伝子組換え実験は宿主又は核酸供与体の病原性及び伝播性等の観点を踏まえクラス1〜4に分類される。

一 クラス1微生物、きのこ類及び寄生虫のうち、哺乳綱及び鳥綱に属する動物(ヒトを含む。以下「哺乳動物等」という。)に対する病原性がないものであって、文部科学大臣が定めるもの並びに動物(ヒトを含み、寄生虫を除く。)及び植物
二 クラス2微生物、きのこ類及び寄生虫のうち、哺乳動物等に対する病原性が低いものであって、文部科学大臣が定めるもの
三 クラス3微生物、きのこ類及び寄生虫のうち、哺乳動物等に対する病原性が高く、かつ、伝播性が低いものであって、文部科学大臣が定めるもの
四 クラス4微生物のうち、哺乳動物等に対する病原性が高く、かつ、伝播性が高いものであって、文部科学大臣が定めるもの


文部科学大臣が定める微生物等(別表第2)

動物使用実験の場合、上述のクラス1〜4を踏まえP1A〜P4Aレベルの拡散措置をとる必要がある。
(ちなみにP1AのAはAnimalのA、P1PのPはPlantのP)

二種省令に記されているP1A〜P4Aレベルの拡散防止措置を以下に示す。

拡散防止措置の区分拡散防止措置の内容
一 PIAレベル イ 施設等について、次に掲げる要件を満たすこと。
(1)実験室については、通常の動物飼育室としての構造及び設備を有すること。
(2)実験室の出入口、窓その他の動物である遺伝子組換え生物等及び遺伝子組換え生物を保有している動物(以下「組換え動物等」という。)の逃亡の経路となる箇所に、当該組換え動物等の習性に応じた逃亡の防止のための設備、機器若しくは器具が設けられていること。
(3)組換え動物等のふん尿等の中に遺伝子組換え生物等が含まれている場合には、当該ふん尿等を回収するために必要な設備、機器または器具が設けられていること、又は実験室の床が当該ふん尿等を回収することができる構造であること。
ロ 遺伝子組換え実験実施に当たり、次に掲げる事項を遵守すること。
(1)別表第二第一号ロ(1)から(6)まで、(8)及び(9)に掲げる事項
つまり、
(1)遺伝子組換え生物等を含む廃棄物(廃液を含む。以下同じ。)については、廃棄の前に遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講ずること。
(2)遺伝子組換え生物等が付着した設備、機器及び器具については、廃棄又は再使用(あらかじめ洗浄を行う場合にあっては当該洗浄。以下「廃棄等」という。)の前に遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講ずること。
(3)実験台については、実験を行った日における実験終了後、及び遺伝子組換え生物等が付着したときは直ちに、遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講ずること。
(4)実験室の扉については、閉じておくこと(実験室に出入りするときを除く。)。
(5)実験室の窓等については、昆虫等の侵入を防ぐため、閉じておく等必要な措置を講ずること。
(6)すべての操作において、エアロゾルの発生を最小限にとどめること。
(8)遺伝子組換え生物等を取り扱う者に当該遺伝子組換え生物等が付着し、又は感染することを防止するため、遺伝子組換え生物等の取り扱い後における手洗い等必要な措置を講ずること。
(9)実験の内容を知らない者が、みだりに実験室に立ち入らないための措置を講ずること。
(2)実験室以外の場所で遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講じようとするときその他の実験の過程において組換え動物等を実験室から持ち出すときは、遺伝子組換え生物等が逃亡その他拡散しない構造の容器に入れること。
(3)組換え動物等を、移入した組換え核酸の種類又は保有している遺伝子組換え生物等の種類ごとに識別することができる措置を講ずること。
(4)実験室の入口に、「組換え動物等飼育中」と表示すること。
二 P2Aレベル イ 施設等について、次に掲げる要件を満たすこと。
(1)別表第二第二号イ(2)及び(3)に掲げる要件
つまり、
(2)実験室に研究用安全キャビネットが設けられていること(エアロゾルが生じやすい操作をする場合に限る。)。
(3)遺伝子組換え生物等を不活化するために高圧滅菌器を用いる場合には、実験室のある建物内に高圧滅菌器が設けられていること。
(2)前号イに掲げる要件
つまり、
(1)実験室については、通常の動物飼育室としての構造及び設備を有すること。
(2)実験室の出入口、窓その他組換え動物等の逃亡の経路となる箇所に、当該組換え動物等の習性に応じた逃亡防止のための設備、機器または器具が設けられていること。
(3)組換え動物等のふん尿等の中に遺伝子組換え生物等が含まれている場合には、当該ふん尿等を回収するために必要な設備、機器若しくは器具が設けられていること、又は実験室の床が当該ふん尿等を回収することができる構造であること。
ロ 遺伝子組換え実験実施に当たり、次に掲げる事項を遵守すること。
(1)別表第二第一号ロ(1)から(6)まで、(8)及び(9)並びに第二号ロ(2)及び(4)に掲げる事項
つまり、
(1)遺伝子組換え生物等を含む廃棄物(廃液を含む。以下同じ。)については、廃棄の前に遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講ずること。
(2)遺伝子組換え生物等が付着した設備、機器及び器具については、廃棄又は再使用(あらかじめ洗浄を行う場合にあっては当該洗浄。以下「廃棄等」という。)の前に遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講ずること。
(3)実験台については、実験を行った日における実験終了後、及び遺伝子組換え生物等が付着したときは直ちに、遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講ずること。
(4)実験室の扉については、閉じておくこと(実験室に出入りするときを除く。)。
(5)実験室の窓等については、昆虫等の侵入を防ぐため、閉じておく等必要な措置を講ずること。
(6)すべての操作において、エアロゾルの発生を最小限にとどめること。
(8)遺伝子組換え生物等を取り扱う者に当該遺伝子組換え生物等が付着し、又は感染することを防止するため、遺伝子組換え生物等の取り扱い後における手洗い等必要な措置を講ずること。
(9)実験の内容を知らない者が、みだりに実験室に立ち入らないための措置を講ずること。
と以下にあげる事項
(2) エアロゾルが生じやすい操作をするときは、研究用安全キャビネットを用いることとし、当該研究用安全キャビネットについては、実験を行った日における実験の終了後に、及び遺伝子組換え生物等が付着したときは直ちに、遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講ずること。
(4) 執るべき拡散防止措置がP1レベル、P1Aレベル又はP1Pレベルであ実験を同じ実験室で同時に行うときは、これらの実験の区域を明確に設定るすること、又はそれぞれP2レベル、P2Aレベル若しくはP2Pレベルの拡散防止措置を執ること。
(2)前号ロ(2)及び(3)に掲げる次の事項
つまり、
(2)実験室以外の場所で遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講じようとするときその他の実験の過程において組換え動物等を実験室から持ち出すときは、遺伝子組換え生物等が逃亡その他拡散しない構造の容器に入れること。
(3)組換え動物等を、移入した組換え核酸の種類又は保有している遺伝子組換え生物等の種類ごとに識別することができる措置を講ずること。
(3)実験室の入口に、「組換え動物等飼育中(P2)」と表示すること。
三 P3Aレベル イ 施設等について、次に掲げる要件を満たすこと。
(1)別表第二第三号イ(2)から(12)に掲げる要件
つまり、
(2) 実験室の出入口に前室(自動的に閉まる構造の扉が前後に設けられ、かつ、更衣をすることができる広さのものに限る。以下同じ。)が設けられていること。
(3)実験室の床、壁及び天井の表面については、容易に水洗及び燻蒸をすることができる構造であること。
(4) 実験室又は実験区画(実験室及び前室からなる区画をいう。以下同じ。)については、昆虫等の侵入を防ぎ及び容易に燻蒸をすることができるよう密閉状態が維持される構造であること。
(5)実験室又は前室の主な出口に、足若しくは肘で又は自動で操作することができる手洗い設備が設けられていること。
(6)空気が実験室の出入口から実験室の内側へ流れていくための給排気設備が設けられていること。
(7) 排気設備については、実験室からの排気(ヘパフィルターでろ過された排気(研究用安全キャビネットからの排気を含む。)を除く。)が、実験室及び実験室のある建物内の他の部屋に再循環されないものであること。
(8)排水設備については、実験室からの排水が、遺伝子組換え生物等を不活化するための措置が講じられた後で排出されるものであること。
(9)実験室に研究用安全キャビネットが設けられていること(エアロゾルが生じ得る操作をする場合に限る。。)
(10)研究用安全キャビネットを設ける場合には、検査、ヘパフィルターの交換及び燻蒸が、当該研究用安全キャビネットを移動しないで実施することができるようにすること。
(11)実験室内に高圧滅菌器が設けられていること。
(12)真空吸引ポンプを用いる場合には、当該実験室専用とされ、かつ、消毒液を用いた捕捉装置が設けられていること。
(2)第一号イに掲げる要件
つまり、
(1)実験室については、通常の動物飼育室としての構造及び設備を有すること。
(2)実験室の出入口、窓その他組換え動物等の逃亡の経路となる箇所に、当該組換え動物等の習性に応じた逃亡防止のための設備、機器または器具が設けられていること。
(3)組換え動物等のふん尿等の中に遺伝子組換え生物等が含まれている場合には、当該ふん尿等を回収するために必要な設備、機器若しくは器具が設けられていること、又は実験室の床が当該ふん尿等を回収することができる構造であること。
ロ 遺伝子組換え実験実施に当たり、次に掲げる事項を遵守すること。
(1)別表第二第一号ロ(1)から(4)まで、(6)、(8)及び(9)並びに第三号ロ(2)から(5)まで及び(7)に掲げる事項
つまり、
(1)遺伝子組換え生物等を含む廃棄物(廃液を含む。以下同じ。)については、廃棄の前に遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講ずること。
(2)遺伝子組換え生物等が付着した設備、機器及び器具については、廃棄又は再使用(あらかじめ洗浄を行う場合にあっては当該洗浄。以下「廃棄等」という。)の前に遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講ずること。
(3)実験台については、実験を行った日における実験終了後、及び遺伝子組換え生物等が付着したときは直ちに、遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講ずること。
(4)実験室の扉については、閉じておくこと(実験室に出入りするときを除く。)。
(6)すべての操作において、エアロゾルの発生を最小限に止めること。
(8)遺伝子組換え生物等を取り扱う者に当該遺伝子組換え生物等が付着し、又は感染することを防止するため、遺伝子組換え生物等の取り扱い後における手洗い等必要な措置を講ずること。
(9)実験の内容を知らない者が、みだりに実験室に立ち入らないための措置を講ずること。
と以下にあげる事項
(2)実験室においては、長そでで前の開かない作業衣、保護履物、保護帽、保護眼鏡及び保護手袋(以下「作業衣等」という。)を着用すること。
(3) 作業衣等については、廃棄等の前に遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講ずること。
(4) 前室の前後に設けられている扉については、両方を同時に開けないこと。
(5) エアロゾルが生じ得る操作をするときは、研究用安全キャビネットを用い、かつ、実験室に出入りをしないこととし、当該研究用安全キャビネットについては、実験を行った日における実験の終了後に、及び遺伝子組換え生物等が付着したときは直ちに、遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講ずること。
(7) 執るべき拡散防止措置のレベルがP3レベル、P3Aレベル又はP3Pレベルより低い実験を同じ実験室で同時に行うときは、それぞれP3レベル、P3Aレベル又はP3Pレベルの拡散防止措置を執ること。
(2)第一号ロ(2)及び(3)に掲げる次の事項
(2)実験室以外の場所で遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講じようとするときその他の実験の過程において組換え動物等を実験室から持ち出すときは、遺伝子組換え生物等が逃亡その他拡散しない構造の容器に入れること。
(3)組換え動物等を、移入した組換え核酸の種類又は保有している遺伝子組換え生物等の種類ごとに識別することができる措置を講ずること。
(3)実験室の入口に、「組換え動物等飼育中(P3)」と表示すること。
四 特定飼育区画 イ 施設等について、組換え動物を飼育する区画(以下「飼育区画」という。)は、組換え動物等の習性に応じた逃亡防止のための設備が二重に設けられていること。

ロ 遺伝子組換え実験実施に当たり、次に掲げる事項を遵守すること。
(1)別表第二第一号ロ(1)、(2)、(4)、(8)及び(9)に掲げる事項
つまり、
(1)遺伝子組換え生物等を含む廃棄物(廃液を含む。以下同じ。)については、廃棄の前に遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講ずること。
(2)遺伝子組換え生物等が付着した設備、機器及び器具については、廃棄又は再使用(あらかじめ洗浄を行う場合にあっては当該洗浄。以下「廃棄等」という。)の前に遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講ずること。
(4)実験室の扉については、閉じておくこと(実験室に出入りするときを除く。)。
(8)遺伝子組換え生物等を取り扱う者に当該遺伝子組換え生物等が付着し、又は感染することを防止するため、遺伝子組換え生物等の取り扱い後における手洗い等必要な措置を講ずること。
(9)実験の内容を知らない者が、みだりに実験室に立ち入らないための措置を講ずること。
この場合において、これらの規定中「実験室」とあるのは「飼育区画」と読み替えるものとする。
(2)第一号ロ(2)から(4)に掲げる次の事項
つまり、
(2)実験室以外の場所で遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講じようとするときその他の実験の過程において組換え動物等を実験室から持ち出すときは、遺伝子組換え生物等が逃亡その他拡散しない構造の容器に入れること。
(3)組換え動物等を、移入した組換え核酸の種類又は保有している遺伝子組換え生物等の種類ごとに識別することができる措置を講ずること。
(4)実験室の入口に、「組換え動物等飼育中」と表示すること。
この場合において、これらの規定中「実験室」とあるのは「飼育区画」と読み替えるものとする。

大型動物(家畜等)の拡散防止措置としては,強固な柵等を二重に回らした特定飼育区画での飼育例があげられている。

施設Home Page へ戻る