麻酔前の絶食・絶水
- イヌ,ネコ,フェレット,ブタおよび霊長類
麻酔導入中あるいは覚醒時における嘔吐のリスクを最小限にするため,麻酔の8-12時間前から飼料を与えるべきではない。
- ウサギおよび小型げっ歯類
麻酔導入中に嘔吐が現れないので術前の絶食は不必要である。
- モルモット
麻酔後に咽頭に飼料が残っていることがあるので,短時間(6〜8時間)の術前の絶食を行うべきである。
- 反芻動物
3〜4日飼料を差し控えると過度の飢餓状態になるが,そうでなければ第一胃に残っている消化物の量には影響しない。
短時間(12〜24時間)飢餓状態にすることは,第一胃の鼓張症あるいは肥大(胃中のガス蓄積)を減ずる助けとなるであろう。
- 大型および中型の鳥類(例ば,アヒル,ニワトリおよびハト)
そ嚢内容物の吐き戻しを避けるため6〜12時間は絶食させるべきであろう。
より小型の鳥類では,低血糖を避けるために2時間より長い絶食は行うべきではない。
- は虫類および両生類
絶食を必要としない。
- 魚類
麻酔前24〜48時間の絶食を行うべきである。
- 消化管手術を行う場合
絶食はすべての動物で必要になるであろう。
げっ歯類およびウサギには糞食があるため,胃の中を完全に空にするには,糞を摂取できない工夫が必要である。
- 妊娠動物
反芻動物およびモルモットを除き,すべての動物種において絶食により重篤で致命的な代謝障害を生じる可能性がある。
ウサギ,モルモットおよび小型げっ歯類では日内リズムから絶食による合併症が生じることもある。そのため術後すぐに飼料を摂取できるようにすべきであるが,光周期が暗期となるまでは餌を食べないかもしれない。さらに,疼痛や外科的ストレスあるいは麻酔からの覚醒の遅延により摂餌量が減少する可能性がある。摂餌および摂水が,術後24時間抑制されるようであれば,代謝への影響が著しい。術前に絶食を行っている場合には,代謝への影響はさらに著しく,研究データおよび動物福祉を損なうことにもなる。そのため特に研究プロトコルに必要なときにのみ絶食することを推奨する。
いかなるときでも,麻酔前に体重を測定し,正確な麻酔薬の用量を計算するためにも,また,麻酔後の体重の減少を評価するうえでも役立つため,麻酔前の体重測定を行っておくべきである。
術前の絶水
すべての動物は,麻酔の約60分前まで水を与えるべきである。もし,動物の摂水量が減じたり,嘔吐,下痢あるいは出血があった場合は,術前の輸液療法が必要であろう。
ラボラトリーアニマルの麻酔(P Flecknell著、倉林 譲監修 学窓社 1998)を参考とした。