大腸菌感病(Colibacillosis)

  1. 病原体

    • Escherichia属菌のEscherichia coli(グラム陰性嫌気性桿菌)
    • 本菌の中にはヒトに下痢や胃腸炎を起こす下痢性大腸菌があり、現在次の6種類に分類されている
      1. 毒素原性大腸菌(enterotoxigenic E. coli : ETEC)
      2. 細胞侵入性大腸菌(enteroinvasive E. coli : EIEC)
      3. 腸管出血性大腸菌(enterohaemorrhagic E. coli : EHEC)
      4. 腸管病原性大腸菌(enteropathogenic E. coli : EPEC)
      5. 凝集付着性大腸菌(enterotoaggregative E. coli : EAggEC)
      6. 均一付着性大腸菌(diffusely adherent E. coli : DAEC)

    • 60℃15分以上、80℃10分以上の加熱により死滅
    • 消毒薬としては70%エタノール、0.05%塩化ベンザルコニウムなどが有効

  2. 病原体保有動物とヒトへの感染経路

    • 本菌はすべての温血動物(哺乳類と鳥類)の腸管、特に大腸に生息する
    • 加熱不十分な肉類やミルク(EHECは特にウシでの保菌率が高い)摂取による食中毒
    • 水や野菜などの非加熱食品・・・カイワレダイコン???

  3. ヒトでの症状

    • 比較的長い潜伏期(3〜7日)の後、腹痛、下痢、発熱で始まり、やや遅れて血便
    • EHEC患者のうち、2〜7%において溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome : HUS)が現れる
    • まれに脳症を併発して死に至ることもある

  4. 動物の症状

    • 本菌は動物(特にウシ)の腸内常在菌である

  5. 診断

    • 菌の分離・同定
    • 分離培地としてはソルビトールマッコンキー寒天を用いる
    • 分離株について血清型別(O-157)、毒素産生能(Vero細胞毒素)を調べる

  6. 予防

    • 現在のところ、本症に特異的で有効な予防方法はない
    • 動物に触れたら手洗いの励行

  7. ヒトの治療

    • 化学療法剤を用いて治療を行う
    • スルホンアミド、テトラサイクリン、セファロスポリン、ストレプトマイシン、カナマイシンなどが有効
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