ネコひっかき病(cat scrach disease : CSD)感染症
  1. 病原体

    • バルトネラ菌(Bartonella henselae)

  2. 病原体保有動物とヒトへの感染経路

    • ネコに咬まれたり、引っかかれたりして発症する
    • 病原体を持っているイヌやノミから感染することもある
    • 発生は7月から12月にかけてが多く、ノミが発生・増殖する時期と深い関わりがある

  3. ヒトの症状

    • 数日から2週間ほどの潜伏期間の後、受傷した部分の丘疹や膿疱、発熱、疼痛と、数週間から数ヶ月続くリンパ節の腫脹。
    • リンパ節腫脹の1〜3週間後に、突然の痙攣発作や意識障害で脳症を併発することもある(発症した人のうちの約0.25%)。

  4. 動物の症状

    • 感染したネコやイヌは、不顕性感染

  5. 発生状況

    • ネコひっかき病は世界的に発生しており、日本では1953年に初めて発生が報告されて以来、全国的な発生が認められている。しかし、患者数の全国的な統計調査は行われていない。ネコひっかき病は全ての年齢層に発生するが、特に若年層に多く見られる。また、西日本と都市部の比較的温暖な地域での発生率が高い傾向にある。
    • 日本の飼育ネコでは、8.8%のネコがバルトネラ・ヘンセレに対して抗体陽性であり(1994〜1999年調査)、7.2%のネコが菌を保有しているという報告がある(1995〜1998年調査)。若齢のネコ、ノミが寄生しているネコ、屋外飼育のネコ、比較的温暖な地域のネコでの陽性率が高くなっている。

  6. 予防治療法

    • ヒトの場合

      • リンパ節の腫れが軽い場合は、自然に治るのを待つ。
      • リンパ節の腫大、疼痛が明らかな場合は、抗菌薬を投与する。しかし、各種の抗菌薬による明確な治療効果は認められない。

    • 動物の場合

      • 保菌状態でも無症状であるため、治療対象にならない。
      • ノミの定期的な駆虫・予防によって、病原体の動物間での循環サイクルを断ち切る。

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