研究機関における動物実験委員会の役割
(日本実験動物医学会教育セミナー)
わが国の大学の状況
笠井憲雪(東北大学大学院医学系研究科附属動物実験施設)
医学生物学の今日の進歩に動物実験の果たした役割は大きく、今後も人間の病因の究明、医薬、農薬の創薬研究、さらには獣医学における動物自体の疾病の治療のための研究に動物を用いることは避けられない。人間の重要な疾病ならびに動物自体の疾病の研究に動物実験は不可欠であるが、科学研究においても動物の生命を尊重し、動物にできる限り苦痛を与えない方法がとられなければならない.このような配慮は、科学的な研究の必要性と矛盾することではなく、動物実験を行う上で極めて肝要なことである.構成: | 委員会には、動物実験を行う部局のほか、動物実験を行わない部局(主に人文社会系)からも相当数の委員を参加させて、幅広い意見を求めるとともに大学(機関)全体の動物実験の適正な遂行に責任を持つ組織とする。 |
任務: | 動物実験を行うには、先ず、実験の目的と必要性、使用する動物の種類と数、使用する方法、とくに、実験動物が被ると予測される苦痛の程度とその軽減方法、使用後の処置等を明記した計画書について、委員会の審査を徹底させる。その結果を科研費の申請に反映させることも考えられる。また、動物実験の妥当性と必要性に関する広報活動も重要な任務である。 |
権限: | 動物実験を行う施設を査察し、実験計画を審査するとともに、必要に応じて実験の遂行状況を調査し、妥当性を欠く実験に対しては中止を含めた改善処置を指示することができる。多くの生物・医学系の学術雑誌への投稿に際しては実験動物の倫理的取り扱いが行われた旨を記載することが求められているが、必要に応じて証明書を発行するなどの対応をする。 |