スエーデンにおける動物実験の規制

Laboratory animal research legislation in Sweden(EBRA)


 スエーデンの動物実験規制方式は動物福祉を規制している一般の法律、つまりAnimal Protection Act(動物虐待防止法)とAnimal Protection Ordinance(動物虐待防止条令)からなっている。これらはともに1988年に成立している。これらの法律が動物実験を規制する方法をつまびらかにするために、スエーデンにおいてこのように多くの法律が運用されている方法を説明する必要がある。

 政府の各大臣は多くの国家委員会を持っている。国会を通過した法案は基本原則として扱われ、ある委員会に対して特別な規則を作る権限を委嘱する。

 スエーデンの農業大臣の下にはNational Board for Laboratory Animals(実験動物国家委員会)があり、その委員会は7地域の地方倫理委員会を設立する責任を負う。各地方倫理委員会の半分は科学者や医学研究者からなり、残りの半分が一般人からなる。地方倫理委員会のわずか1/3が動物福祉の代表者からなる。地方倫理委員会の議長は年長の弁護士であり、普通は判事がなる。地方倫理委員会を運営する詳細なルールは実験動物国家委員会によって決められる。全ての動物実験と試験の計画についてこれらの地方倫理委員会によって検討され、動物が被る苦痛に対して実験により得られる重要性が上回る場合にのみ許可される。研究計画の有効期限は3年である。これらの地方倫理委員会は研究者に対して助言する権限しか持たないが、研究者は地方倫理委員会の助言には常に従わなければならない。地方倫理委員会の承認を得ずに行われる動物実験は動物虐待法の基本的な動物福祉の条文に反するために違法となる。地方倫理委員会の決定に対しては上告することができない。

 全ての動物実験計画書は地方倫理委員会の承認が必要である。それらの研究には飼料を給餌するだけの研究、麻酔下の実験後に殺処分する研究そしてin vitroの医学研究のために使用する組織の採取が含まれる。

 スエーデンの法律では脊椎動物だけでなく、全ての動物を対象としていることが特徴的である。実験に使われる動物は専用に繁殖飼育されたものでなければならないという一般的な要求がある。しかし、実験動物として普通に入手することができない種については、例外としてほとんどの種を使用することが認められている。それらの例外の中には野生のほ乳類も含まれている。動物の再使用に関してはスエーデン方式では禁止されていないが、動物を再使用するに当たってはそのことを研究計画書に記載し、地方倫理委員会の許可が必要である。

 地方あるいは地域を担当する当局から派遣された獣医査察官は、研究施設が地方倫理委員会にて承認されたとおりの実験を行っているか否かをチェックする。問題が発見された場合には、地方倫理委員会の指令に従うように研究者に強制する権限および罰金を科す権限を持っている。しかし、必要なら実験者はより上級な地方当局へこのことを不服として訴えることができる。1990年に法律が改正され、地方倫理委員会の決定は査察官の意見より優先することが認められている。改正法では動物実験計画が地方倫理委員会により承認され、その地方倫理委員会により承認された計画通りに行われていれば、査察官には計画を停止させる法的権限はない。

 実験動物国家委員会は記録を保管する責任があり、使用された動物の数や種類についての統計的資料を集める責任もある。国家委員会委員会には実験者や技術者の教育訓練のための規則や代替法開発資金に関する規則を作る責任もある。

 農業国家委員会内には獣医管理部があり、そこは動物施設の建築前あるいは大改修前に、施設の設計を承認しなければならない。温度制御、湿度、ケージサイズなどがガイドラインに見合っていれば施設は免許を得ることができる。各施設には動物実験を監督する人を任命することが要求され、その人物は農業国家委員会によって承認されなければならない。この農業委員会は実験動物の生産者や供給者の登録、承認も行っている。

 研究者、技術者、飼育者の全ては動物実験に関わる仕事をするに当たって2年間の訓練を受けることが要求される。この要求を修了し、試験に合格するまでは、施設の監督者の責任の下で仕事をすることが要求される。訓練の正式なカリキュラムや期間は特に規定されていないが、実験動物国家委員会は訓練のよって収得されるべき学科を設定している。

 実験動物国家委員会は動物実験の記録に関する規則や統計データの報告に関する規則も作っていいる。規則はある種の処置(例えば、免疫法、モノクローナル抗体作製法、急性毒性試験など)が行われる方法についても規制している。
訳者 松田幸久