人獣共通感染症連続講座(山内一也)(第145回) 2003.6.11より

(2)SARSウイルス

   世界保健機関 WHOが全世界に新型肺炎の発生を知らせたのは3月12日でした。そして、15日には初めてSARSの名前を用い、感染地域への渡航中止の勧告を出しました。

 WHOは直ちに世界10カ国13の研究所の協力を得て、原因解明のための国際研究グループを結成しました。

4月上旬には、国際的学術雑誌に新型コロナウイルスが患者から分離されたという論文が、ホンコン大学、米国CDC、ドイツの研究所と3箇所からそれぞれ発表されました。そして数日後には全部の遺伝子の配列が明らかにされました。

 さらに、オランダの研究所ではカニクイザルに新型コロナウイルスを接種する実験を行いました。サルは3日目には動きがにぶくなり、4日目には呼吸困難となり、解剖した結果、肺炎の起きていることが確かめられました。

これらの結果からWHOは新型コロナウイルスがSARSの最大の原因であると結論したのです。