【動管法は本当に変わるのか】

 現段階では動管法が改正されるかどうかわからない状態ですが、先生の感としては変わるとお思いでしょうか。(山形大学 大和田)

 私は変わると思う。ただし、これは私の予想でしかないのですが、議員立法で変えるというけれど、“動物実験施設の査察を動物実験委員会でどうするか”といったような細かいことまで議員の人達が動管法に付け加えていくような改正はしないと思う。
 第11条にある実験動物の規制に関して、具体的なことはこれまでにある「動物の飼養及び保管等に関する基準」で改正ということになるとなると思う。その際に総理府が出てくることになり、動物保護審議会が召集される。動物保護審議会の下に愛玩動物や実験動物等についての基準の改正を検討する委員会が作られ、そこで基準改正の作業が始まる。今までの基準改正の例をみてもこのような作業に3〜5年かかっている。そして最後には各省庁を代表する人々が全員賛成しないと委員会の改正案も通らないような仕掛けになっている。そういうことで、実験動物の基準に問題のある部分が出てきたときに、厚生省や文部省がそこで反対すればにっちもさっちもいかなくなってくる。そういう改正作業が続くと思われるが、ただし、あまり考えられないことではあるが、基準改正を2年以内にするという付帯決議が出てきた場合には、そのような悠長なことは言っていられなくなる。そう言った意味からも、自民党に働きかけることも必要ではあるが、それと同時に実験動物関係者の意見や自主規制の資料をそろそろまとめて、総理府に送りつけることが一番いいことだと考えています。(前島)

【虐待の定義についての動管法と基準の関係】

 動管法で虐待の定義が定められたときに、動物に種々な処置をすることは虐待にあたるとして、法律の下にある基準において制限を受けると言うことはないのか。(神戸大 塩見)

 私はないと思います。法律というのは常識の中から出てきますから、少なくともペットクリニックで診療として日常行われているような行為、即ち麻酔下に行われる手術などを虐待だというような法律の書き方はしないと思います。(前島)

【動管法改正にあたって動物実験関係者の取るべき態度】

 動管法あるいは基準の改正にあたってはもっと研究者が前面に出るべきで、動物実験施設関係者がしゃしゃり出るのは良くないという意見もありますが、私としては施設管理者であっても動物の立場からものを言っても良いのではないかと考えます。前島先生はどう考えますか。(神戸大学 塩見)

 私は百花繚乱で、いろんな人がいろんなことを言うのが本来の姿であると考えます。実験動物管理者は研究者という一面も持っていますが、そのような人達は実験動物環境研究会をはじめ実験動物学会、実験動物技術者協会などを介して、これまで発言してきたと思います。それに対していわゆる研究者だけの方が発言しないできて、今になって慌てるのは怪しからんと思っています。(前島)

【“動物は物ではない”とはどういうことか】

 “動物は物ではない”とはどういうことか.また,法律の条文にそのことが加えられた場合にどのような事態が考えられるか.(秋田大 松田)

 ドイツを除いて世界中の法律(民法)が人と物の2分法を取っていますが,これに動物を加えて3分法にするということです.物と言うことであれば動物に怪我をさせた場合に治して返せば良いのですが,人に近いものとなると慰謝料あるいは動物傷害罪などという問題が出てくるのではないか.
 ドイツでは民法で“動物は物ではない”としていますが、この条文はグリーンパーティーとの政治的かけひきのうちに間違えて通ってしまったものであり、実際問題として、ドイツの法律家の間でもこの条文については種々の意見があるようです。また、他の国の法律家も自分たちの国に“動物は物ではない”とする条文を適用することは考えていないようです。連絡会顧問の吉田氏ですら連絡会が作成した改正案の中にこの条文が唱われていることに反対しています。しかし、愛護団体の人達は“動物は物ではない”という自分たちの主張、理念を動管法の中に入れたいがためにこの条文を加えたようで、彼らとしても通るとは思っていないようです。(前島)

個人的な見解ですが,“動物は物ではない”という中にはペットや実験動物など所有者が決まっている動物に対して,自分の物であるから何をしても良いということに対する歯止めの意味もあるのではないか.(アニマルケア ?)

【毒性試験は虐待行為か】

愛護団体の改正案では毒性試験を行った場合に動物に有害な薬物を与えたとして虐待行為になる可能性はないか.(広島大 古河)

 毒物を与えることは虐待とされますが、さすがにJAVAの人達でさえ動物実験において薬を与えていることを虐待だとは言っていません。例えば今問題になっている砒素でさえ昔は薬として使われており、今でも治療として使われる場合があり、それを残虐行為とみなされることはありません。動物実験も第11条で認めているわけですから、そのようなことで動物実験は虐待であるとはとても考えられない。もう少し常識的な線で考えていいと思っております。(前島)