平成26年度実験動物慰霊式


  平成26年度秋田大学動物実験慰霊式が10月3日(金)午後4時から動物実験部門玄関脇にある実験動物慰霊碑前において開催されました。
  午前中は雨でしたが、式の開始前には雨も上がり 121名の参加者により、動物実験に使われた動物たちの御霊に菊の花を添え感謝の意が捧げられました。


バイオサイエンス教育・研究センター長挨拶

  本日は、お忙しい中を実験動物慰霊式にお集まりいただき有難うございます。センター長の尾野でございます。今年も慰霊式の季節になりました。年に一度ではありますが、動物実験に関わる研究者がこうして一同に集い、実験動物の御霊を前にして、改めて科学研究者としての心構えを皆さんと一緒に確認させていただきたいと思います。
  さて、動物実験をとりまく環境というのはここ数年とても厳しくなってきています。つい先日、科学誌Natureにドイツでの事例が掲載されておりました。ご覧になった方もいらっしゃると思いますが、少しだけ紹介させて下さい。  一昨年、チュービンゲンにあるマックスプランク研究所に動物愛護団体のメンバーが、どのような経緯で入れたのか詳細はわかりませんが、侵入いたしまして、半年間にわたって秘密裏に動物実験の様子を動画におさめていたというのです。それを七分間程度に編集した動画がテレビで放映され、その残酷さが一般の方々にとてもショックを与えました。原文ですと「hard to watch」ですから、見るに堪えられないということでしょうか。あまりにもひどいということで、研究を直ちに中止するようにという圧力がかかったという事例です。実際は、その動画はかなり意図的に、誤った印象を植え付けるためのもので、その後の第三者による調査で、動物の取り扱いは適正にかつ厳格に行われていたことが明らかになりました。記事では、その後研究所がどのような対応を行ったかについても記載されています。
  これを遠く離れた外国のことという風に理解して頂いては困ります。我が国におきましても、動物実験の廃止を求める市民団体の動きは強くなる一方で、五年ごとに見直される「動物愛護及び管理に関する法律」についても、昨年は研究者にとってかなり厳しいものになるのではと危惧されました。もしかしたら動物実験ができなくなるのではと、とても心配したのを覚えております。幸い、日本学術会議を始め多くの科学者団体の要望もあり大きな改正には至りませんでした。でも、四年先にはまた見直しが行われるわけでして、今後今と同じように動物実験が行えるかどうかというのは決して保証されているわけではありません。昨年は大きな改正こそありませんでしたが、それでも、@法律の下にある基準において定期的にきちっと点検を行うこと、Aまた可能な限り外部機関による検証を行うこと、Bそして検証結果を公表するということが盛り込まれており、各研究機関はこれを順守するために具体的な行動を起こさなくてはなりません。当センターにおきましても、順次進めてまいります。
  先ほどのNatureの記事のタイトルは “German research organizations need to help their workers to defend animal research.”、つまり、「ドイツの研究機関は、動物研究を行う研究者を守るため、対策を講じるべきだ。」というものでした。これは日本もそうです。秋田大学は、動物研究を行う研究者、つまり皆さんを守るために対策を講じるべきなのです。秋田大学においては、動物実験部門への入退室管理や実験計画書及び報告書の提出、各研究室で実験動物の取り扱うに際しての環境チェックなど、事細かく厳しいルールを定めております。これらは全て、最終的には我々研究者を守るための措置であることを何卒ご理解いただきたく存じます。
  繰り返しになりますが、皆様におかれましては、引き続き秋田大学動物実験指針に基づき適正な動物実験の実施に努めていただけるようお願い致します。以上、私のあいさつに代えさせていただきます。
平成26年10月3日
バイオサイエンス教育研究センター長
尾野 恭一

医学研究科研究科長挨拶

  皆さん、実験動物慰霊式にお集まりいただきまして誠に有り難うございます。医学部長の伊藤でございます。一言ご挨拶を申し上げます。
  実験動物を使った実験というのは医学研究、生物学研究におきまして不可欠なものであることは間違いありません。今日お集まりの皆様も勿論そのことをひしと感じていることと思います。しかしながら、動物の命を奪うという行為がほぼ全ての動物実験に伴う、という事実も忘れてはいけません。そのことを我々は常に意識しながら実験を行わなければなりません。つまり、医学・生物学の発展、そして人類の幸福を求めるために、実験動物の動物たちは命を捧げているということなのです。是非、そのことを肝に銘じて日々の動物実験を行っていただきたいと思います。
  先ほども尾野先生から話がありました動物実験に反対する人たち、この人たちは動物実験の一面しか見ていない、でもそれは先ほど述べたように重要な一面でもあります。ですから我々は常にその人たちの考え方も理解し、頭に入れながら、しかし動物実験は人類の幸せのために必要不可欠であることであることをしっかりと認識して研究を行っていただきたいと思います。
  最近は、いろいろなところで研究の信頼性が揺らいでいるという事実が多々見られます。総合研究の論文が有名な雑誌から削除される、それから訂正されるというようなことが最近目立ってきているなと私は思っています。これは大変ゆゆしいことです。そこにもし動物実験が係わっていた場合には、そこで命を落とした動物は無駄死にになっているわけです。そういうことがあっては絶対にいけない。動物の命の大切さを常に念頭に入れながら皆さんのこれからの実験をしっかり考えて、そのことを意識して日々の実験を行っていただきたいと思います。
  今日は、医学・生物学の発展のために尊い命を捧げてくれた動物たちに感謝をし、そしてその御霊を皆さんで慰霊していただくためにこの式がございます。是非皆さん、その気持ちを一人一人の心の中に噛みしめながら今日の慰霊式に臨んでいただきたいと思います。 宜しくお願い致します。

平成26年10月3日
医学研究科研究科長
 伊藤 宏

慰霊のことば

  平成26年度秋田大学実験動物慰霊式に当たり、利用者を代表し、医学医療の発展ために尊い命を捧げていただいた多くの実験動物に対し、謹んで慰霊の言葉を述べさせていただきます。平成25年度における本学動物実験部門において実験に使用された動物は、マウス57,279匹、ラット1,852匹、ウサギ122匹、モルモット69 匹、イヌ8匹、ブタ1匹と合計59,331匹を数えました。これらの実験動物により得られた成果は基礎医学、臨床医学、獣医学の分野の多岐にわたり、多くの論文や学会発表がなされました。
  これまでの医学生物学の発展には、数多くの実験動物の犠牲の上に成し遂げられたものであり、常に哀悼と敬意の念を忘れることがあってはなりません。近年では、分子細胞学的研究手法の発展により、細胞のみの使用によって目的とする研究成果を挙げることが可能になり、研究が進んでおりますが、それでもヒトへの応用を考えると、命ある動物個体を用いての検証が必要になります。そこで我々は無駄な動物使用数の削減、代替法の利用に基づいた適正な実験計画を練り、動物の健康管理、ストレス・苦痛軽減の実施に尚一層努め、実験に携るすべての者が、命を大切に思い、取り扱う心構えで、研究に真摯に取り組み、社会に貢献できる成果を発信し、還元することが使命であると考えます。
 
  より有効で安全な治療法や診断法を開発するためには、現時点ではどうしても動物を用いた実験に依存せざるを得ないという実情があり、医学の進歩を考えた上で実験動物に依存しなければならない事実を広く社会に周知し、理解を求めていく責務があり、それによって初めて犠牲となった動物への供養が果たされることを願います。
  最後に、本学における医学研究のために尊い命を捧げ犠牲となられた多くの実験動物に対し、謹んで感謝と敬意の念を表し、我々の健康や福祉が動物たちの命のうえに成り立っている事実を再認識して研究に従事していくことを誓い、慰霊の言葉といたします。
平成26年10月3日
器官・統合生理学講座
善積 克

部門長挨拶

  今年の4月から部門長を仰せつかりました石井でございます。宜しくお願いいたします。そしてまずお礼を申し上げます。 本日はお忙しい中を実験動物慰霊式に100名を越える皆様にお集まりいただき動物実験部門職員を代表して感謝致します。また、利用者の代表として器官・統合生理学講座の善積先生には慰霊の言葉をいただき有り難うございました。お陰様で無事本年度の慰霊式を終えることができました。
   ところで、これまで動物実験部門の管理運営にご尽力いただいた松田准教授も今回の慰霊式が最後と言うことで、来年の3月にはご退官されます。松田先生の後任として今年の8月から西島和俊准教授を採用し、現在実務の引き継ぎを行い、皆様の研究に支障が出ないようにしているところです。
   技術職員も新たに4人を加え、部門の若返りを図っておりますので、皆様の研究により役立つことが期待されます。    現在、動物実験部門の面積は3,500uあり、その中に16,000匹を越える動物が飼育され、毎日60人ほどの方が部門を利用しております。この数は5,000uクラスの施設と比べても見劣りがしません。動物実験部門としては部門職員一丸となって管理運営に邁進して参りますので、今後ともご協力の程宜しくお願い致します。 本日は有り難うございました。
平成26年10月3日
動物実験部門長
石井 聡

秋田大学医学部実験動物慰霊式