平成23年度実験動物慰霊式


 平成23年度秋田大学動物実験慰霊式が10月4日(火)午後4時から動物実験部門玄関脇にある実験動物慰霊碑前において開催されました。 数日前からの悪天候も今朝には回復し、快晴のもと 119名の参加者が集まり、動物実験に使われた動物たちの御霊に感謝の意が捧げられました。

  1. 開式の辞
  2. 挨  拶
    • バイオサイエンス教育・研究センター長 尾野 恭一教授 
    • 医学部長 本橋 豊 教授 
  3. 黙  祷
  4. 慰霊のことば(形態解析学・器官構造学講座 鈴木良地准教授)
  5. 献  花
  6. 挨  拶(副センター長 松田准教授)
  7. 閉式の辞
 


慰霊のことば

 平成23年度秋田大学バイオサイエンス教育・研究センター実験動物慰霊式に当たり、利用者を代表し、実験動物に対し謹んで慰霊の言葉を述べさせて頂きます。 平成22年度における本学動物実験部門において実験に使用された動物は、マウス48,647匹、ラット1,972匹、ウサギ50匹、モルモット7匹、 イヌ4匹、 と合計50,680匹を数えました。 これらの実験により得られた成果は基礎医学、臨床医学、獣医学の分野の多岐にわたり、多くの論文や学会発表がなされました。また、4名の方が動物を用いた研究により本学で学位を取得 しております。

 医学生物学での進歩とは即ち新しい事実を積み上げることであります。そのための手法が全て試験管内で完結するのであれば、これは研究者にとっても大変に望ましい状況であります。近年の分子生物学的手法の発展は証左の一つになると思います。しかし、現実にはただ一つの細胞に等価な環境を試験管内につくりだすことも不可能であり、新たな一歩は命の犠牲無しには踏み出せません。  飼育室にはいりますと、ラットの母親が子供を自らの身体でかくし私をキッとにらみます。それを見るたびに数十年前に地震で揺れる家具から反射的に僕らをかばった私の母の眼差しを思い出します。  毛皮の下に内蔵された構造を見るにつけ、彼らの基本設計が私たちと大きく変わらないことを実感します。実験している私と彼らの差とは一体どれほどのものだろうと考えます。

 
 これらの相同性は動物を愛護的に扱わなくてはならない根拠でもあり、また、彼らから得た事実が人体の理解にフィードバックできる根拠でもあると考えます。  近年の動物愛護運動の高まりに伴い、実験に生き物を使用することへの風当たりは良いものとは言えません。研究機関の多くが公的財源で運営されていることもあり、研究結果がより豊かな社会生活実現のために施設外に還元されることが強調される機会も増えました。けれども、私たちがまず第一にせねばならないことは科学的に真摯であることと考えます。かつて1トンのピッチブレンドから100mgのラジウムを抽出したマリー・キュリーの業績は今日の社会における放射線物理学の立ち位置を予見していたが故に偉大なのでしょうか?  適正な動物実験管理の実現のため私たちとは立場を異にする声にも耳を傾け、科学的な検証に耐えうる結果を残す努力をすることが犠牲になった動物の供養であり、 また、広く社会に理解してもらうことにつながると考えます。

 最後に、本学における医学研究のために尊い命を捧げ犠牲となられた多くの実験動物に対し、謹んで感謝と敬意の念を表し、我々の健康や福祉が動物たちの 命のうえに成り立っている事実を再認識して研究に従事していくことを誓い、慰霊の言葉といたします。

  平成23年10月4日
     秋田大学医学部形態解析学・器官構造学講座   鈴木良地 秋田大学医学部実験動物慰霊式