慰霊のことば
平成23年度秋田大学バイオサイエンス教育・研究センター実験動物慰霊式に当たり、利用者を代表し、実験動物に対し謹んで慰霊の言葉を述べさせて頂きます。
平成22年度における本学動物実験部門において実験に使用された動物は、マウス48,647匹、ラット1,972匹、ウサギ50匹、モルモット7匹、 イヌ4匹、 と合計50,680匹を数えました。
これらの実験により得られた成果は基礎医学、臨床医学、獣医学の分野の多岐にわたり、多くの論文や学会発表がなされました。また、4名の方が動物を用いた研究により本学で学位を取得
しております。
医学生物学での進歩とは即ち新しい事実を積み上げることであります。そのための手法が全て試験管内で完結するのであれば、これは研究者にとっても大変に望ましい状況であります。近年の分子生物学的手法の発展は証左の一つになると思います。しかし、現実にはただ一つの細胞に等価な環境を試験管内につくりだすことも不可能であり、新たな一歩は命の犠牲無しには踏み出せません。
飼育室にはいりますと、ラットの母親が子供を自らの身体でかくし私をキッとにらみます。それを見るたびに数十年前に地震で揺れる家具から反射的に僕らをかばった私の母の眼差しを思い出します。
毛皮の下に内蔵された構造を見るにつけ、彼らの基本設計が私たちと大きく変わらないことを実感します。実験している私と彼らの差とは一体どれほどのものだろうと考えます。
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