平成19年度実験動物慰霊式


  平成19年度秋田大学実験動物慰霊式が9月20日(木) 午後4時30分から動物部門玄関脇にある実験動物慰霊碑前において 105名の参加者得て、以下に示す式次第で行われました。
  1. 開式の辞
  2. 挨  拶
    • バイオサイエンス教育・研究センター長
    • 医学部長
  3. 黙  祷
  4. 慰霊のことば(手塚裕之 生体防御分野 助教)
  5. 献  花
  6. 挨  拶(動物実験部門 准教授)
  7. 閉式の辞
 

 
バイオサイエンス教育研究センター長挨拶

 お忙しい中を実験動物慰霊式にお集まりいただき有難うございます。私は今年の7月16日から前任の鈴木先生に代わりましてバイオサイエンス 教育・研究センターのセンター長を拝命しました。センター長として皆さんの前でご挨拶させていただきます。
 数日前まで県内には大雨注意報が出ておりましたが、幸い雨に会うこともなく無事慰霊式を迎えることができました。

 このような動物の霊を供養する儀式はわが国固有のものであるらしく、古来から、日本人の優しさを表す行事として行われてきました。 その優しさは実験に使用された動物の霊にだけでなく、日頃、実験に使用している動物の取扱いにも反映されているものと思います。

 病気の解明に、またその治療法の開発に、動物実験は必要不可欠であります。しかしながら、 動物実験を行うには実験動物の福祉に対する配慮がさら に強く要求されております。今後とも、適正な動物の取扱いにご協力いただけるようお願いします。

 ところで、当部門は動物使用数が国立大学法人動物実験施設の中でも非常に上位にランクされております。それだけ秋田大学の研究活動が活発なのですが、 その反面、ご承知の如く建物面積は最も狭小でありまして、さらに築後30年を経て老朽化が進んでいます。そのため概算要求にて建物の増改修工事をお願いしているところであります。

 動物取扱いのソフト面だけでなくハード面も含め適正な動物実験が推進できるように努力していくことを動物達の御霊に誓い、私の挨拶とさせていただきます。

平成19年9月20日    
秋田大学バイオサイエンス教育研究センター
センター長 茆原順一   

医学部長挨拶

 本日ここに平成19年度の秋田大学実験動物慰霊式を執り行うにあたり、医学部の教職員並びに学生を代表し、医学研究のために尊い生命を捧げられた 実験動物の御霊に対して、衷心より哀悼の意を表します。

 医学・医療の進歩は日進月歩であり、医学研究の推進は病者の健康を回復し、広く人類の福祉に貢献するものです。
私たちは研究のために捧げられたもの言わぬ動物たちの重みを改めて認識し、研究者としての気持ちを引き締めていく必要があります。
医学医療の倫理が強調される時代になりましたが、生きとし活けるものとしての動物の命に対しても強い倫理観をもち行動することが求められます。
秋田大学医学部の研究者を代表して、医学・医療の発展のため、研究に供された動物たちの冥福を心から祈念したいと思います。

 終わりに臨み、秋田大学の医学研究のますますの発展を祈念し、式辞とします。

平成19年9月20日    
秋田大学医学部長
本橋 豊   

慰霊のことば

 平成19年度秋田大学実験動物慰霊式にあたり、利用者を代表して、尊い命を捧げて下さった実験動物に対して謹んで慰霊の言葉を述べさせて頂きます。 平成18年度における本学動物実験部門において実験に使用された動物は、マウス28,182匹、ラット4,998匹、ハムスター9匹、ウサギ445匹、モルモット90匹、イヌ25匹と 合計33,749匹を数えました。これら多くの実験動物の犠牲により、貴重な研究成果が得られ、58編の論文発表、182件の学会発表がなされました。また、18名の方が本学で学位 を取得しております。

 近年の医学のめざましい進歩は、数多の実験動物の犠牲の上に成し遂げられたものであります。昨今では、複雑な生命現象を分子レベルで理解するために、 マウスを中心にした遺伝子改変動物の作製ならびにその解析が盛んにおこなわれ、その数は年々増加の傾向にあります。また、今後少なくとも20年は実験動物に依存することが 予想されております。一方で、動物愛護の立場から見れば、現代は動物と良い関係を保って共生していく社会を目指しており、そこに無用な支配関係があってはならないという 考えのもと、“医学の進歩には実験動物が不可欠である”という考え方は国際的にも厳しく見直される情勢にあります。
 

 このような背景の下、我々は分子生物学や培養細胞などを駆使した、実験動物に替わる新しい実験法の開発、ならびにこれら代替実験を積極的に取り入 れなければなりません。しかしながら、医学研究では、試験管内のような極めて制限された空間での現象が、生体内でも実際に再現されるのかどうか確認することが求められます。 このような生体を用いた検討をせざるをえない局面に立たされた時のみ、我々は実験動物の必要性・妥当性を見出すとともに、その利用にあたっては、数を必要最小限に抑えることは もちろん、ストレスや苦痛を出来る限り軽減させることに努めるだけではなく、実験動物に対して、常に住みよく不安のない飼育環境を提供する等、実験動物の福祉の向上を図ってい くことも忘れてはなりません。

  我々研究者は、実験動物の命により得た研究成果を社会に還元する使命と、こうした医学の進歩の多くの部分を実験動物に依存しなければいけないことを 広く社会に周知し、理解を求めていく責務があり、そのことによって初めて動物への供養が果たされるものと考えます。

  最後に、尊い命を捧げて下さった動物に対して感謝と哀悼の念を表し、ご冥福をお祈りするとともに、実験動物の命によって我々の健康と福祉が成り立って いることを、ひと時も忘れることなく研究に従事していくことを誓い、慰霊のことばといたします

  
平成19年9月20日    
秋田大学医学部 生体防御学分野 手塚 裕之      

動物実験部門副部門長挨拶

 お忙しい中をお集まりいただき有難うございました。
 部門の利用状況ですが、平成18年度の延べ利用者数は約26,000人で、1日平均70人、多いときには1日100人を越す人達が この建物に出入りしております。利用者の90%は医学部の教職員、大学院生で、残りの10%が工学資源学部、COEおよび外部企業の人達です。 その中で利用回数が最も多かったのは、先程「慰霊のことば」を述べていただいた手塚先生が所属する生体防御分野でした。

 昨年度に使用された動物数については、「慰霊のことば」の中でも詳しく述べられましたが、COEの終了にともない動物の使用数は前年に比べ減っております。 それでも現在この建物の中には10,000匹を越える動物が収容されています。その99%はマウス・ラットで、その中でも半分以上が遺伝子改変マウスです。 新たにグローバルCOEが採択されたことから、また使用数が増加することが予想されます。

 このような状況の中、一昨年に動物の愛護及び管理に関する法律が改正され、学長の責任のもとに自主管理による適正な 実験動物の飼育と適正な動物実験の実施が義務づけられました。また、動物実験に関係する法規制には、動物愛護法だけでなく遺伝子組換え動物に関する 法律、麻酔に用いる麻薬に関わる取締法、病原微生物に関する感染症予防法など多くの法律があります。

 動物実験を行っている方々には、これらの法律ならびに秋田大学動物実験指針を遵守し、 今後とも適正な動物実験を実施していただけるようお願いして、私の挨拶とします。
秋田大学医学部実験動物慰霊式