平成18年度実験動物慰霊式


  平成18年度秋田大学実験動物慰霊式が9月27日(水) 午後4時30分から動物部門玄関脇にある実験動物慰霊碑前で行われました。 昨年と同様に朝からの雨となりましたが、それでも120名を 越える参加者にご参列いただき、利用者を代表してCOE研究室の長谷川公範先生から実験動物の霊に対し感謝のことばを捧げていただきました。
 また、慰霊式の後にバイオサイエンス教育・研究センター 動物実験部門主催のセミナーが開催され、 滋賀県立成人病センター研究所長 日合 弘先生による特別講演「疾患モデルの遺伝子解析:見果てぬ夢を追って」が行われました。
 

 
バイオサイエンス教育研究センター長挨拶

 本日はお忙しいところ、平成18年度秋田大学実験動物慰霊式にお集りいただきまして、有難うございます。 本日は医学部長不在のため、バイオサイエンス教育研究センター長の私からご挨拶をさせていただきます。
 病気の解明に、またその治療法の開発に、動物実験は必要不可欠です。しかしながら、動物実験を行うには実験動物の福祉に対する配慮がさら に強く要求されております。
 今年の6月から「動物愛護法」が改定施行されたために、種々の取り扱い基準、指針、ガイドラインが変更されました。
 これをうけて医学部長会において自主管理を行うための機関内規定案を現在作成中ですが、今後はこれをもとに秋田大学動物実験規定を改定する予定になっております。

 また、動物実験に関係する法規制としては動物愛護に関する法規制だけではなく、遺伝子組換え生物等の使用規制、麻酔に用いる麻薬に関わる取締法、 海外からのげっ歯類の輸入にかかわる感染症予防法など多くの法規制がこれまでに改正されております。
 動物実験を行うにあたりましては、これらの法律を遵守し、かつ動物福祉に配慮した実験を実施していただくようにお願い申し上げます。
 最後になりますが、あらためて実験動物の御霊に心から感謝の意をささげまして、慰霊式の挨拶とさせていただきます。

平成18年9月27日    
秋田大学バイオサイエンス教育研究センター
センター長 鈴木 聡    

慰霊のことば

 平成18年度秋田大学実験動物慰霊式に当たり、利用者を代表し、命を頂いた多くの実験動物に対し謹んで慰霊の言葉を述べさせて頂きます。

 平成17年度における本学動物実験部門において実験に使用された動物は、マウス39132匹、ラット6609匹、ウサギ320羽、モルモット75匹、 イヌ3匹、ネコ1匹と合計46140を数えました。これらの多くの実験動物の犠牲により、基礎医学、臨床医学、獣医学の分野において貴重な研究成果が得られ、53編の論文、 124件の学会発表がなされました。さらに、17名の方が実験を動物用いた研究により本学で学位を取得しております。

 
 自然科学の研究、とりわけ医学研究は生命の謎を解き明かす基礎研究とともに、それらの知見をヒトへ還元することで様々な疾患の病態解明、 さらには新しい治療法の開発を目指しています。そうした中、この間の医学、医療の進歩を顧みますと、そのほとんどが実験動物の数多くの犠牲の上に成し遂げられてきたと 言っても過言ではありません。我々が日常用いている薬剤は言うに及ばず、診断や治療の機器や新たな手技、手法の開発等、我々の医学医療の進歩は実験動物の犠牲を抜きに してはあり得ませんでした。このように、今を生きている我々の社会を支えている医学医療が、数多くの実験動物の犠牲の上に成り立っていることを直視し、犠牲となった 動物のかけがえのない生命に対する哀悼を忘れることがあってはなりません。

  そのような中、近年の分子生物学等を始めとする生物研究とコンピューターを始めとする科学技術の著しい進歩により、動物実験に依存しない生命科学研究の遂行が模索され ていますし、今後ともそのための努力を進めなければなりません。その一方で、きわめて高度に統合された生命体を理解するために、さらに加えて、より有効で安全な診断・ 治療法の開発のために、どうしても生体を用いた実験に依存せざるを得ないという実情があります。そのような状況の中、動物の尊い生命を犠牲にして実験を遂行するに当たっては、 動物実験の妥当性・必要性を常に自らに合理的に問いただすと同時に、その遂行にあたっては生命を尊重する高い倫理性を常に持つことを忘れてはなりません。それと同時に、 犠牲となる動物のかけがえのない命の数を可能な限り最小限にし、実験動物のストレスや苦痛を少しでも軽減させるよう、日々我々は真摯に検討し続けなくてはなりません。 さらに、実験動物の犠牲の上で成り立つ研究の成果を広く社会に還元し、我々の医学医療の進歩が如何に実験動物の犠牲の上に成り立っているかを広く誠実に伝えることで、 犠牲となった動物の生命を我々の中で生かし、そしてその生命を尊重し続ける努力をしなくてはいけないと考えます。

  最後に本学における医学研究発展のために犠牲になった多くの動物に対して、感謝と追悼の念を表わし、そのご冥福をお祈りすると同時に実験動物の犠牲の上に我々の医学、 医療が成り立っている事実を改めて認識することを誓い、慰霊の言葉と致します。

平成18年9月27日    
秋田大学医学部21世紀COE研究室
長谷川公範      

秋田大学医学部実験動物慰霊式