平成16年度実験動物慰霊式



 平成16年度秋田大学実験動物慰霊式が9月3日(金)午後4時から動物施設玄関脇にある実験動物慰霊碑前で行われた。 このところ大型の台風が次々と上陸し、天候が心配されたが、当日は好天に恵まれ慰霊式は無事行われた。飯島俊彦医学部長の挨拶、ご来賓の山村研一教授 (熊本大学発生医学センター)に続いて利用者を代表して佐々木純子助手(分子医科学分野)から慰霊のことばをいただいた。
また、慰霊式の後に第1回のバイオサイエンス教育・研究センターセミナーが開催され、動物実験部門利用者の講演さらに山村研一先生の特別講演が行われた。




学部長挨拶


 本日はお忙しい中,実験動物慰霊式にお集まりいただき,有り難うございます。
 医学医療の発展のために供された実験動物の尊い命に対し心から感謝の意を表し,冥福を祈りたいと思います。
 今年の4月から動物施設は全学共同利用施設である秋田大学バイオサイエンス教育・研究センターの動物実験部門として スタートしました。全学施設といいましても利用者の殆どは医学部の研究者ですので、事務的な面やいろいろな面でこれまで通り医学部が全面的に協力 して運営が行われております。
そのような訳で、今回も医学部長として挨拶をさせていただく次第です。
 さて、動物実験部門の利用状況ですが、このところ遺伝子改変マウスを用いた研究が急激に増えております。3年前に比べると 7倍近くのマウスが施設に収容されています。施設の面積は限られており、実験者が希望する数の動物を収容できない状況になっています。そのためバイオ サイエンス教育・研究センターの稲垣センター長と動物実験部門の鈴木部門長が概算要求等において、遺伝子改変マウスを収容できるSPF 区域の増改修を要求しています。私もそれなりの努力をしております。大学本部からも少しずつではありますが理解を得られつつあります。 改修工事が一日も早く実現するよう医学部としても全面的に支援していきたいと考えております。
 遺伝子改変マウスの急増は、当大学だけではなく全国的な傾向です。本日の慰霊式には、わが国の医学研究における遺伝子改変 マウス利用の端緒を開かれたお一人である熊本大学の山村研一先生にもご参加頂いております。山村先生には慰霊式の後のセミナーにおいて、遺伝子改変 マウスが医学研究になぜ必要なのかということを科学的な面からご講演頂くことになっておりますので、この後に予定されていますセミナーにもふるってご参加下さい。
 次に、動物実験を取り巻く福祉面でのわが国の最近の状況ですが、動物愛護法が平成12年に施行されてから今年で4年になります。 改正の際に法施行後5年をめどに見直しをはかるという条件がついておりました。来年で5年になりますので現在見直しの準備が進められているところです。 そのような中で、わが国の動物実験計画書の審査手続きが杜撰であるため欧米並みの法律への改正を要求するという動物愛護団体の記事が先月、地方紙やnature にも掲載されていました。
それに先立ち、日本学術会議からはより適切な動物実験の実施のために国内における統一したガイドラインの作成と外部評価システムの確立が提案され、 その実現にむけて関係諸団体の協力が要請されております。
 このような実験動物使用のガイドラインと評価システムが一日も早く導入されることを望みますが、現在の所は、実験者ならびに動物実験委員会 の方々に動物実験指針のより一層のを遵守をお願いし、改めて実験動物の尊い命に対して心から感謝の意と冥福を祈り、動物実験慰霊式の挨拶とさせていただきます。

平成16年9月3日    
秋田大学医学部長    
飯島 俊彦      

来賓挨拶


 ご紹介いただきました山村でございます。
 ご存知のように1953年に遺伝子DNAの構造が明らかとなり、その50年後の2003年を目指して、ゲノムの塩基配列を解読するという所謂 ヒトゲノムプロジェクトが進行して、現在、多くの動物の塩基配列が明らかとなっております。しかし、ゲノムの塩基配列がわかっただけでは遺伝子機能を十分に明らかにすることはできません。 また、いろいろな病気の原因遺伝子が特定されていますが、その遺伝子だけでは病気というものを説明することができないということが次第に明らかとなってきています。 したがって、21世紀は生命科学の時代と言われておりますが、そのようなことを今後明らかにしていくことが課題としてあげられています。 それはまさにDNA や細胞レベルだけでは十分な知見が得られず、やはり個体の実験系である実験動物を用いた動物実験が今後ますます重要になってきます。 ただ、動物実験を行うにあたっては3Rを基本として実験が行われるのが前提であり、そのために人や設備、建物のインフラ整備が必須となってくるものと思われます。  そういう意味において、秋田大学におきましても先程医学部長のお話にもありましたように、種々努力されていると思いますので、是非それを達成されて、 きちっとした動物実験を行っていけるような体制ができることを願っています。

 この後、第1回のバイオサイエンス教育・研究センターセミナーにおいてお話しをさせていただきますが、その前に、これまで生命科学実験に使われた実験動物に対して 感謝の意を込めまして挨拶とかえさせていただきます。

平成16年9月3日    
熊本大学発生医学センター    
山村 研一      

慰霊のことば

 平成16年秋田大学動物実験部門の慰霊式にあたり、実験者を代表して犠牲となられた多くの動物たちに対して、 慎んで慰霊のことばを述べさせていただきます。
 平成16年度における本学動物実験部門の延べ利用者数は教官、職員、学生を合わせて23,603人に達しました。
 また、この間、実験利用された動物はマウス37,065匹、ラット6,721匹、モルモット94匹、スナネズミ7匹、ウサギ243羽、イヌ17頭、ブタ1頭、ヒツジ3頭の 計44,151を数えました。・・・


画像をクリックすると映像と音声が出ます。
・・・最後に、この慰霊式にあたり医学の進歩という名の下に犠牲となられた多くの動物たちに対して改めて謝意を表するとともに、安らかに眠りにつくことを願っつて 慰霊のことばとします。



平成16年9月3日
秋田大学医学部分子医科学分野
佐々木純子

部門長挨拶

 今年も多くの方々に実験動物慰霊式にお集まりいただき有り難うございました。当部門の建物ができましてから20年が経ちました。20年前には6,000匹程度の動物が使われておりましたが、 昨年は44,151匹とその頃に比べて7倍もの多くの動物が使用されました。この間に医学生物学の研究も進展し、現在はポストゲノム時代が到来しております。そのため最近使われる動物の80% 以上がトランスジェニックマウスやノックアウトマウスです。このような遺伝子改変マウスの使用が増えたことにより動物の総使用数が増えましたが、その一方でイヌ、ネコなどの使用数は著しく 減りました。この傾向は今後20年以上続くと予想されております。このような使用動物種の変化に応じて早急な施設の増改修工事が必要であり、先ほどの医学部長の挨拶にもありましたように、 その実現に向けて努力しているところであります。利用者の方々にはご理解ご協力いただければ幸いです。

 なお、この後すぐに臨床200番講義室におきましてバイオサイエンス教育・研究センター主催のセミナーを開催することにしております。 既にご通知しておりますように、セミナーでは先ほどご挨拶いただいた山村先生からも「医学研究における発生工学」と題してご講演をいただけることになっております。 どうかこのまま200番教室に移動していただけるようお願いいたします。

平成16年9月3日    
秋田大学バイオサイエンス教育・研究センター
動物実験部門長 鈴木 聡

秋田大学医学部実験動物慰霊式