平成15年度実験動物慰霊式



 平成15年度秋田大学医学部実験動物慰霊式が10月1日(水)午後3時半から動物施設玄関脇にある実験動物慰霊碑前で行われた。午前中は好天であったが,昼過ぎから雨となり,小雨の中を慰霊式は行われた。それでも100名程の参加者があった。飯島俊彦医学部長の挨拶に続いて利用者を代表して井上多恵助手(感覚器学講座 旧皮膚科学講座)から慰霊のことばをいただいた。
また、慰霊式の後に本学部附属動物実験施設の松田副施設長から「動物実験施設25年のあゆみ」と題する講演が行われた。


学部長挨拶


 本日はお忙しい中,実験動物慰霊式にお集まりいただき,有り難うございます。

 医学医療の発展のために供された実験動物の尊い命に対し心から感謝の意を表し,冥福を祈りたいと思います。
 さて,秋田大学医学部においてこのような実験動物慰霊式が行われましたのは,医学部設置3年後の昭和47年からと聞いております。当時は実験動物慰霊祭としてお寺で行われておりましたが,平成3年にこの実験動物慰霊碑が建立され,それからは宗教色を排し,実験動物慰霊式として続いております。数えてみますと今年で31回目になります。

 現在,全学共同利用施設として秋田大学バイオサイエンス教育・研究センター構想が進められており,動物実験施設はその一部門として再編される予定です。そのため,来年からは医学部としてではなくは秋田大学として動物実験慰霊式を行うことになると思われます。動物実験環境のますますの改善を期待したいと思います。
 しかし,全学施設になるとはいっても,生命科学教育・研究の中心である動物施設と慰霊碑が現在の場所にあることに変わりはありません。今後の慰霊式もこの慰霊碑の前で行われることになります。

 ところで,ご承知のように来年からは秋田大学も法人化されます。このように大学の機構そのものが変わり,また動物実験施設の組織も変わるなど,目まぐるしい変換期にあります。また,大学の教育・研究にも産学官連携や企業経営理念といった考え方が導入されようとしております。しかし,昨年の慰霊式でもお話ししましたように,動物実験を行う上での基本は3つのR,つまり1) Reduction --動物実験や動物使用の数の削減、 2) Replacement --動物を用いることなく、試験管内などの実験で置き換える、3) Refinement --洗練された実験手法による実験動物の苦痛の軽減,この3つのR,Reduction, Replacement,Refinementに変わりありません。
 さらには,大学が社会から適正な評価を受けることも重要な課題であり,情報公開が前提となります。そのような環境では,3Rに加えてさらに2つのR,つまりReliabilityResponsibilityが必要ではないかと考えます。動物福祉を優先するあまり実験結果に信憑性を欠いては何もなりません。動物福祉に配慮した上にも,やはり,実験データの信頼性Reliabilityが絶対に必要です。また,「研究の自由」は基本的に守らなければ成りませんが,医学研究の目的やその結果は社会と密接な関係を有してます。医学研究そのものの社会への説明責任Responsibilityが重要となります。
 皆様にはこの5つのRに基づいた動物実験を実行していただきますようお願い申し上げます。

 改めて実験動物に感謝し,ご冥福をお祈りし,慰霊式の挨拶とさせていただきます。


平成15年10月1日    
秋田大学医学部長    
飯島 俊彦      

慰霊のことば

 2003年度秋田大学医学部実験動物慰霊式に当たり、利用者を代表してここに謹んで慰霊の言葉を述べさせて頂きます。

 2002年度において,秋田大学医学部および医療技術短期大学において実験に供された動物は,マウス10,747匹、ラット5,813匹、モルモット70匹、スナネズミ113匹、ウサギ299羽、イヌ3頭、ニワトリ9羽、ブタ3頭、ヒツジ4頭の計17,058匹を数えました。これら多くの実験動物の犠牲により,基礎医学,臨床医学,獣医学において貴重な研究成果が得られ,47編の論文,7編の総論および151件の学会発表がなされました。また12名の方が動物実験により本学で学位を取得しております。

 病態の解明や治療法の開発などの近年の医学の進歩は,数多くの実験動物の犠牲の上に為されてきたといっても過言ではありません。特に21世紀ポストゲノム研究においては,それぞれの遺伝子の機能を解明するにあたって培養細胞を用いた研究にはどうしても限界があり,遺伝子改変動物を用いた個体レベルでの解析が不可欠となってきます。私たち研究者は,動物実験を行うにあたっては,その実験が必要不可欠なものであるかを繰り返し慎重に検討し,安易な態度で動物実験に臨むことは戒めなければなりません。一方,やむを得ず動物実験を行う場合にも,動物愛護の精神に基づき,動物に無用の苦痛を与えないように細心の配慮をするべきであると考えます。

 近年の動物愛護運動の高まりと,国立大学への動物実験に対する情報公開開示の要望に応えるために,私たちは一般社会の理解を得られるような実験計画を立案し,使用する動物数を必要最小限にし,可能な限り代替え方法を利用し,できうる限り動物のストレスや苦痛を取り除くよう,自らの実験で真剣に検討しなければなりません。そして,動物の尊い生命を犠牲にして得られた貴重な情報を,広く社会に貢献できる成果として還元することが一番の動物たちに対する供養であると考えます。

 最後に,本学における医学研究発展のために犠牲になられた多くの動物たちに対して、改めて敬意を示すとともに,安らかな眠りにつくことを願って慰霊のことばといたします。

平成15年10月1日
秋田大学医学部感覚器学講座(旧皮膚科学講座)
井上多恵

秋田大学医学部実験動物慰霊式