平成13年度実験動物慰霊式



 平成13年度秋田大学医学部実験動物慰霊式が9月19日(金)午後4時半から動物施設玄関脇にある実験動物慰霊碑前で行われた.飯島俊彦医学部長の挨拶に続いて利用者を代表して寺田邦彦助教授(生化学第一講座)から慰霊のことばをいただいた。
また、慰霊式に先立って講演会も行われた。


学部長挨拶

 本日はお忙しい中、実験動物慰霊式にお集まりいただき、ありがとうございます。
 昨年度も、秋田大学医学部において動物実験委員会の審査を経たうえで、多くの動物実験が行われました。その成果は多くの論文、学会発表、そして学位取得として実を結んでおります。これら、学問の進歩に貢献していただいた実験動物の御霊に対し、慎んでご冥福をお祈りいたします。
 現在、国立大学は独立行政法人化や再編統合、そして民間的競争原理の導入と言った課題を突きつけられ、改革の真っただ中にあります。秋田大学医学部においても、国立の医育機関として教育と研究に邁進することはもちろんのこと、地域の発展を支える拠点となる努力を続けていかなくてはなりません。
 さて、動物実験を取り巻く状況にも変革がなされつつあります。一昨年の暮れには、動物実験を規制している法律が「動物の愛護及び管理に関する法律」として改正されました。また、本年4月からは情報公開法が施行されました。今回の法改正では、動物実験については「現行の総理府の基準に基づく自主管理を基本とすべき」とされ、従来通りとなっておりますが、「施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずる」とされております。
 また、情報公開法が施行されたことから、多くの国立大学へ動物実験に関する文書の開示請求がなされております。もし不適切な動物実験が行われている場合には、一般社会からも厳しい批判を受けることとなります。生命科学に携わる我々実験者は、適正な管理の下での適切な動物実験の実施に、より一層の努力をすることはもちろん、その説明責任も果たさなくてはなりません。
 医学の進歩に動物実験が果たした役割は計り知れないものがあります。今後も動物実験なくして、医学・医療の進歩は成しえません。
 秋田大学医学部が、世界の医学・医療のリ−ダシップを取りうる教育研究機関となるべく努力することは勿論ですが、医学の教育・研究を支える動物実験においても、世界に誇れる福祉と環境を実現させるべく、皆さまのご協力をお願いいたします。
平成13年9月19日    
秋田大学医学部長    
飯島 俊彦      

慰霊のことば


 平成13年度秋田大学医学部実験動物慰霊式にあたり、利用者を代表し、犠牲となった多数の実験動物に対し、謹んで慰霊の言葉を述べさせて頂きます。
 平成12年度に秋田大学医学部および医療短期大学において実験に供せられた動物は、マウス4,730、ラット4,756、モルモット313、ウサギ310、犬28、豚20、羊4、鶏15で、計10,176頭におよびました。これら多数の実験動物の犠牲により、貴重な研究成果が得られ、83の論文発表と224の学会発表が行われています。また、23名の方が動物実験により学位を取得しております。
  病態の解明や治療法の開発など医学の進歩は、数多くの実験動物の犠牲によって為されてきたものであると言っても過言ではありません。また、今後の医学の発展にも実験動物は欠かせないものとなることは明らかであります。
 しかし、近年、動物愛護運動の高まりと共に、動物実験に対する批判あるいは非難の声が寄せられています。我々研究者は、このような声を軽んずることなく真摯に受け止め、動物実験の必要性、妥当性についてもう一度深く考えなければなりません。今後は、遺伝子改変動物を利用した研究の広がりと共に、さらに多くの動物が犠牲になることも予想されます。
 我々は動物実験に当たって、さらに充分な検討と厳密な審査をし、また、動物に対して尊厳を欠いた行為を行うことを厳に慎まなければならないことは言うまでもありません。
 我々は、我々が行う実験をできる限り公開し、多くの動物の犠牲によって得られた研究成果を広く社会に還元できるよう努力しなければ、社会からの理解を得ることはできないでしょう。 常に真摯な態度で動物に接し、社会に大きく貢献できるような成果を挙げることのみが、これまでに犠牲となった動物たちに対しての一番の供養になるものと考えます。
 最後にこの慰霊式にあたり、医学の進歩という名の下に犠牲となった多くの動物たちに対し、改めて謝意を表するとともに、安らかな眠りにつくことを願って慰霊のことばといたします。

平成13年9月19日
秋田大学医学部生化学第一講座
寺田 邦彦   

秋田大学医学部実験動物慰霊式