平成12年度実験動物慰霊式




 平成12年度秋田大学医学部実験動物慰霊式が9月28日(木)午後4時から動物施設玄関脇にある慰霊碑前で行われた. 三浦 亮医学部長の祭主挨拶に続いて利用者を代表して水野 大助手(小児外科学講座)から慰霊のことばをいただいた。


学部長挨拶

 本日はお忙しい中、実験動物慰霊式にお集まりいただき有り難うございます。
 今日の私たちの生活は衣食住全般にわたって、さまざまな形で動物の恩恵を被っております。とくに健康と福祉に貢献し ている医学は実験動物に多くを負っており、これなくして現在の医学の進歩はあり得なかったと申し上げても過言ではありません。また、今後の医学の 進歩も実験動物なくしては有りえないと考えます。
 本学部の動物実験に関わる方達が実験動物慰霊碑の前に集い、医学研究のために命を捧げていただいた動物の諸霊に感謝の 念を新たにしますことは、大変意義深いことであります。
 さて、平成十一年度に本学部においても多数の動物実験が行われましたが、これらは全て動物実験委員会の審査を経たもの であります。また、その成果として、多くの論文、学会発表、学位取得がなされております。これら学問の進歩にかかわった動物の御霊に対してこの後に 行われます黙祷において、謹んでご冥福をお祈りしたいと考えます。
 ところで、昨年の暮れに「動物の保護及び管理に関する法律」が改正され、法律名が「動物の愛護及び管理に関する法律」 に変わるとともに、愛護動物をみだりに虐待あるいは遺棄した者に対する罰則が強化されました。しかし、動物実験については、「現行の総理府の基準 に基づく自主管理を基本とすべき」とされ、従来通りとなっております。ただし、改正法の付則において「この法律の施行後五年を目途として施行の状況 について検討を加え、動物の適正な飼養及び保管の観点から必要があると認めるときは、所要の措置を講ずるものとする」とあります。もし一般社会の 共感を得られない不適切な動物実験が行われている場合には、動物実験に関してもさらに厳しい法規制が加えられる可能性があります。
 また、来年の四月から情報公開法が施行されますが、動物実験計画書も開示対象の文書となります。人類の健康と福祉に必要 な動物実験の実施に支障をきたすことのないよう研究者のプライオリテイーを守りながら、適切な開示方法を検討する必要があります。
 このような動物実験を取り巻く諸問題は一大学だけで解決がつくものではないことから、全国国立大学医学部長会議内に 「実験動物小委員会」が設置され、国立大学全体として検討しているところであります
 さらに、医学部のみならず秋田大学全体においても透明性を保ち、かつ国民に支持される動物実験を進める必要があります。 そのために本学では、医学部動物実験指針を全学の動物実験指針に改め、来年四月からは医学部以外で行われる全ての動物実験についても計画書の審査を 行うことになりました。
 ところで、昨年度から実験動物慰霊式の一環としまして講演会を開催しております。 本年度は北海道大学医学部附属動物実験施設教授の有川二郎先生から「最近の動物実験を取り巻く状況」についてご講演をいただきましたが、学内の研究 者および学部学生に科学的かつ倫理的に適正な動物実験の推進を図るうえで大変有意義な講演会となりました。有川先生にあらためて感謝いたします。
 最近では遺伝子操作が施された実験動物が多くの研究に利用されております。また遺伝子治療を目的とした動物実験も増えており 周辺科学技術の進歩にともない「研究の多様化」が進んでおります。
 このような社会情勢の変化と周辺科学技術の進歩を取り入れた新たな設備・機能が動物実験施設には求められており、このことは 先頃行われた外部評価においても指摘されたところであります。
 本学部では、動物実験委員会並びに動物実験施設運営委員会、動物実験施設の協力のもと、二十一世紀に相応しい動物実験の推進 に努めて参るつもりでありますので、今後とも関係各位のご理解とご協力をお願い申し上げます。

平成12年9月28日    
秋田大学医学部長    
三浦   亮      



慰霊のことば



 平成十二年度秋田大学医学部動物実験施設慰霊式にあたり、関係者を代表し、犠牲となった多数の実験動物に対し、謹んで弔辞を 述べさせて頂きます。  平成11年度に秋田大学医学部および医療短期大学において実験に供せられた実験動物はマウス5110匹、ラット5877匹、モルモット91匹、ウサギ361羽、 猫1頭、犬25頭、豚30頭、羊2頭、鶏9羽で、計11506におよびました。
 これら多数の実験動物の犠牲により、基礎医学、臨床医学、獣医学において貴重な研究成果が得られ、92編の論文発表と227の 学会発表が行われています。
 もとより、動物実験は医学をはじめとする生命科学の進歩に大きく貢献してきましたし、今後もヒトや動物の種々の病態解明や 疾患の治療に不可欠であると考えられます。
 一方、動物福祉の観念が広く普及するとともに、研究手段としての動物実験の必要性、妥当性についても、その是非が論議される ようになってきました。
 もちろん、安易に動物実験を行うことはあってはならないことであり、動物実験にあたっては充分な検討と厳格な審議が必要であ ります。
 しかし、最も大事なことは、我々研究者は常に実験動物の“いのち”の重さを忘れることなく、研究に臨むことだと考えます。
 また、実験動物の、“いのち”とひきかえに得られた研究成果を社会、ひろくは地球の生命に還元することが研究者の義務であり、 犠牲になった多くの動物に対する一番の供養になるものと思います。
  最後に本慰霊式にあたり、改めて医学生物学の進歩のために犠牲となった多数の動物に対し、謝意を表するとともに、動物達が安 らかな眠りにつくことを願って慰霊のことばとさせて頂きます。

平成12年9月28日
秋田大学医学部小児外科学講座
水野 大

動物実験施設報告

 本施設を利用して平成十一年度に行われました動物実験は121件で、延べにして17,512名の方が施設を利用しております。
 また、昨年度に使用された動物種のそれぞれの数は先程の「慰霊の言葉」の中で述べられておりましたが、全部で11,506匹でした。 その96%はマウス、ラット等のげっ歯類で、イヌおよびネコの使用は10年前に比べ1/10の1%以下となっております。
 先程の学部長の挨拶にもありましたが、昨年の暮れに動管法が改正され、また来年春には情報公開法が施行されるなど、動物実験を 取り巻く状況は大きく変化しております。そして動物実験に向けられる一般の人達の関心もこれまで以上に高まることが予想されます。
  本学部におきましては動物実験に関し動物実験委員会並びに動物実験施設運営委員会が責任を持って掌理しておりますが、実験者 の一人一人が動物福祉に配慮した適切な動物実験を心掛けていただけるようあらためてお願いする次第です。
 最後に、御参加いただきました皆さまそして本日の慰霊式の準備のためにお骨折りいただきました方々に感謝いたします。

平成12年9月28日     
附属動物実験施設     
副施設長 松田幸久    

秋田大学医学部実験動物慰霊式