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動物実験部門の紹介

 医学・生物学の教育・研究には動物実験が必要不可欠であり、秋田大学にも実験動物の飼育と適正な動物実験の遂行を目的として 動物実験施設が設置されております。この施設は昭和47年に研究機器センター内に設けられた動物部門を 前身としており、昭和55年に省令施設となり、平成16年に全学共同利用施設である秋田大学バイオサイエンス教育・研究センターの一部門として改組されました。建物としては昭和52年に900m2の動物実験棟が竣工し、昭和57年に1,800 m2が増築 され、そして平成21年に増改修工事が行われ、現在3,500 m2の総床面積となっております。

 施設にはマウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジなど多くの 実験動物が飼育されており、成人病、癌、難病の原因解明と治療法・手術法の開発、 安全性の高い薬の開発、さらには発生、免疫、脳機能などさまざまな生命現象を解明するための研究も行われております。
 それらの研究に年間約60,000匹の動物が使われ,これらの動物を用いた実験により 論文(学位論文を含む)及び学会発表合わせて年間に約200件の研究業績があげられ,また毎年10人前後の学位取得者を出しております。

 実験動物は感情を持った生きた試薬とも言われておりますように遺伝的な特性を損なわずまた動物福祉に適った管理が必要であり,さらに 病原体の感染を防ぎ,安定した品質を維持するための適切な環境が必要となります。そのため動物にとって病気やストレス の原因となるものが施設内に持ち込まれないように施設への出入りは電子錠により制限され、また動物の飼育管理のために 専任教官である獣医師と専門の技術職員が配置され,高性能の空気調和装置をはじめ精度の高い実験機器,省力化を考慮した飼育装置が設備されております。

 動物実験によりこれまでに多くの真理が見出され今日の医学・医療が進歩してきました。しかし難病をはじめとしてまだまだ未解決の問題が多く残されております。 世界に目を向けますとSARSなど新たな人獣共通感染症の脅威が生じており, 身近な所ではつい最近わが国でも発生を見た狂牛病(BSE)やトリインフルエンザの問題などで、その対応が求められております。社会の成熟により動物福祉 の観念が発達した今日,動物実験の必要性についての是非が論じられておりますが,これらの問題を解決するためにはまだまだ動物実験は必要であります。

 勿論,実験動物に与える苦痛を軽減するという“動物福祉”の考えを基にした動物の取り扱いならびに実験操作への配慮は言を待ちません。 そのため秋田大学では動物実験規程を整備し、動物実験委員会を設置して科学的かつ倫理的に適正な動物実験の実施に努めております。 さらに教育・啓蒙の一貫として初年次ゼミにおいて実験動物学の講義を行うとともに,新たに動物実験を行う者を対象として毎年春に 動物の取り扱い及び実験処置に関する実技講習会を開催しております。秋には実験動物慰霊碑の前に研究者及び関係者を集め,尊い生命を研究に捧げていただいた実験動物の霊に対し 感謝の意を込めて実験動物慰霊式を行っております。

 最近ではヒトの糖尿病や高血圧,脳卒中などの成人病のモデルとして開発された各種の疾患モデル動物や 遺伝子操作が施された実験動物(トランスジェニックマウス)が多くの研究に利用されております。また遺伝子治療を目的とした動物実験も増えてきており周辺科学技術の進歩に ともない“研究の多様化”が進んでおります。
 このような社会情勢の変化と周辺科学技術の進歩を取り入れた新たな設備・機能が動物実験部門には求められております。これまでの機能をさらに充実し, また新たな科学技術ならびに実験動物の福祉に対応した施設を実現することが秋田大学の発展と社会への貢献につながるものと考えております。
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