研究プロジェクト

当教室では増田教授のもとに教室員が全員でプロジェクトに加わっており、特定の研究担当者はいない。


動脈内膜肥厚発生機序の研究

 動脈硬化症の初期病変である内膜肥厚は、中膜に由来すると考えれる平滑筋細胞で構成されているが、平滑筋の内膜への遊走の証明はまだなされていない。動脈内膜肥厚の一般的なモデルはバルーンなどを用いた内膜細胞剥離が多いが、この方法では内膜に炎症細胞やマクロファージが出現し、実験の解析が複雑になる。当教室では我々が開発した血流変化による動脈内膜肥厚モデルを用いて研究を行っている。このモデルは動脈の血流を増大させて拡張性リモデリングを起こし、その後血流を減少させることで内膜肥厚を作製するもので、内皮細胞がよく保たれ、内膜には平滑筋細胞のみが出現するため、平滑筋細胞の増殖遊走の解析に有利な特徴がある。

心筋、骨格筋毛細血管の可塑性についての研究

 心筋の毛細血管は、低酸素状態あるいは持続的な運動負荷において、その密度が増加する。また骨格筋を神経を介して電気刺激すると毛細血管の密度が著しく増加し、電気刺激を中止すると毛細血管の密度は元にもどる。毛細血管の密度の増加は血管新生であり、逆に減少は血管消失であることがわかっている。この研究は血流の変化による血管構築の変化を具体的に明らかにするもので、骨格筋と心筋の毛細血管の可塑性を血流の変化と対応して検討する。骨格筋の組織血流量は神経を介した電気刺激により慢性的に増大させ、心筋の組織血流量は動静脈吻合を利用した血流量負荷心を作成することにより増大させる。


マラリア感染胎盤の病理組織学的研究

 年間のマラリア罹患数は世界中で約3億人と言われており、更にそのうち100〜300万人がマラリアで死亡している。妊婦がマラリアに感染した場合は重症化を招き死亡率が高くなり、子宮内胎児発育不全も引き起こすため、熱帯途上国の母子保健おいて妊婦マラリアの予防が重要視されている。妊婦重症化の原因としてはマラリア感染胎盤にあるとされため、マラリア感染胎盤の病理組織と細胞接着分子の感染胎盤の発現を in vivo で検討する。


圧負荷退縮心モデルの作製

 圧負荷肥大心の負荷解除後の心筋細胞、毛細血管のリモデリングを検討するために、手技的に大動脈狭窄のために用いた糸を除去するのは難しい。我々はラットで狭窄部の結紮糸が時折大動脈から内腔に通り抜けることを経験しており、これを意図的に生じさせることにより圧負荷退縮モデルを作製する。結紮糸が大動脈の壁を通り抜けるためには内皮細胞が剥離していないことが必要であることがわかりつつあり、狭窄度、糸の太さ、ラットの週令などの条件から検討する。


国際共同研究

Zarins CK. 教授と教室スタッフ(スタンフォード大学医学部血管外科学教室)

血行動態の変化による動脈リモデリングの研究


国内共同研究

佐藤正明教授(東北大学大学院工学研究科機械電子工学)
安藤譲二教授(東京大学大学院医学研究科医用生体工学)
山口隆美教授(名古屋工業大学生産システム工学)
谷下一夫教授(慶応大学理工学部システムデザイン工学)

の各教室と血管についての共同研究を行っている。

東北大学、慶応大学、(平成11年度から名古屋工業大学も参加)とは年に一度、各校持ち回りで合同セミナーを開き共同研究の成果を発表、検討を行っている。


学内共同研究

第二内科、整形外科、心臓外科、第一病理などの各教室、付属動物実験施設と心血管についての研究、剖検材料を用いての研究を共同で行っている。