医学系研究科長 挨拶

秋田大学大学院医学系研究科 研究科長 本橋 豊

人と真摯に向き合う。秋田大学で医学に関わる者を代表して、まずはこの姿勢が揺るぐことがないよう常に心の支柱として、日々に臨むことをお約束します。ここ秋田から全国、そして世界に発信を続けながら、我々が目指すのはただ一つ。「信頼」される医療です。

秋田大学医学部は1970年、我が国における戦後初の医学部として創設されました。立ち遅れた秋田の医療を憂いた県民が一丸となって国を動かし、開設されたものです。秋田大学医学部は、この地に暮らす人々の「希望」を具現化したものでした。保健学科(4年課程)は、秋田大学医療技術短期大学部(3年課程)を改組して,2002年10月に新しく医学部に設置されています。保健学科の前身は秋田県立高等看護学院と秋田県立保健婦学院、そして医学部の前身は秋田県立中央病院。共に県立の医療機関の流れをくみます。その足跡をたどれば、県民の暮らしと共に「成長」してきたことがわかります。

1976年に最初の卒業生を世に送り出しました。これまでに医学科では3,465名が卒業しています。臨床面では、秋田県内はもとより全国各地の医療を担うとともに、研究面では、多くの卒業生が優れた研究を世に示し、その結果として医療界の様々な分野の指導者として活躍しています。

医療を通じて人と真摯に向き合うためには、高度な知識・技術に裏打ちされた「プロ」の力量は当然として、それ以前に「人間」の度量が問われると考えています。本学部では、入学直後から、症例・事例ベースで、将来どの分野でも重要な診療科横断的プライマリケア教育・医療コミュニケーション教育を開始しています。さらに、同時期から大学内診療科のみならず、県内の医療機関、医師会、行政の皆様とともに、医療人としての使命感・プロフェッシナリズムの意識を育成することを目的として早期臨床実習を開始しています。多くの皆様の力によって、人として、そして医療人として育まれていきます。

学部教育におけるこれからの医療者育成には、膨大な量の知識や技術の修得が求められます。知識修得の教育手法としては、双方向型講義とチュートリアル教育に加え、今後、チーム基盤型学習、アウトカム基盤型学習を推進して診療参加型臨床実習(クリニカルクラークシップ)を充実させています。生涯にわたって自ら積極的に学び、課題を解決していく能力を修得し、根拠に立脚した医療をチームで実践できる医療人の育成が不可欠なのです。

技能の修得には、2012年3月に完成した東日本最大規模の「シミュレーション教育センター」も最大限に活用します。センター内では、最新のシミュレーターで種々の手技や臨床状況を体験し、自らの技量に結びつけます。学生や医療者のスキルアップと多職種連携教育・チーム医療教育を充実することにより、医療の質と医療充実のキーワードである医療連携力の向上につなげることが目標です。さらにセンターでは、医療者を目指す高校生にも実践的な研修を提供していくことを考えております。医療の世界を目指す「後輩」たちの、一つの指針になれば、という願いからです。

大学院博士課程では、大学院教育の実質化を強化するために、単一専攻にした上で、専門的研究を開始する前に共通の準備教育、クラスター制度を導入しています。2007年からは医学科修士課程を新設し、将来の医科学研究を担う科学者の養成を図っています。保健学科では、2007年から修士課程を新設し、看護師、理学療法士、作業療法士を対象に、高度な専門性を持った職業人を養成することを目的とした大学院教育を開始しています。

研究面では、2002年に文部科学省の21世紀COEプログラム(細胞の運命決定制御)、2007年にはグローバルCOEプログラム「生体調節シグナルの統合的研究」(群馬大学との連携)が採択され、生命科学の先端研究教育拠点として国内外から高い評価を受けています。今後、グローバルCOEプログラムは、2012年、全学組織「生体情報研究センター」として大きく発展します。

現在、国内の医療においては、地域と専門性における医療者の偏在が深刻な問題となっています。秋田大学医学部の目標は、極めてシンプルです。患者優先の医療。それしかありません。そのために臨床・研究・教育の三本の柱を強固なものに育て、知識と技術を積み重ねていきます。

基本は人。地域の中で育てられ、その過程で地域に還元することを目指す。同時に世界を意識して探求、研鑽を重ねていきます。秋田大学医学部の門は常に、皆様に向かって開かれています。多くの「後輩」たちにくぐっていただき、医療人として羽ばたいていただきたい。

どうか皆様方のより一層のご支援をお願い申し上げます。共に歩んでいけることを願っています。

平成24年4月
医学部長・医学系研究科長 澤田賢一