各種尿石除去剤の溶解力と金属腐食性試験

○佐藤政義,助川康子,石郷岡清基,松田幸久(秋大・医・動物実験施設),武藤 一(秋大・有害廃液処理施設)

 当施設では昭和60年からウサギ及びモルモットの飼育頭数の増加に伴い、その省略化を目的に水洗式の自動飼育機を使用している。 しかし、長期使用(2カ月以上)することにより水洗板の表面に尿石が付着する。尿石の層が薄い場合は50℃以上の温水である程度の洗浄除去は可能であるが、 全ての尿石を除去することは困難である。 そこで今回、現在我国で市販されている尿石除去剤5種類について、ウサギ及びモルモットの尿石に対する溶解力を比較検討するとともに、アルミニウム片に対 する腐食性試験も実施したので報告する。

  1. 材料及び方法

     ウサギ及びモルモットの尿石は2カ月間飼育放置後、十分乾燥した固形のものを用いた。
     今回比較対象とした尿石除去剤はタスカルサン(クスノキ化学KK)、ライムアウエイ(エコラボKK)、サンアライエース(乾商事KK)、 ネオバリューA.L、ネオバリューA.L NP(ファインKK)の5種類でこれらは全て強酸性(PH0.1〜3.0)である。 方法は100%(原液)と、50%水溶液100mlに固形尿石2.0gを浸漬しその尿石溶解の所要時間を検討した。また、10%水溶液では、尿石2gを2時間浸漬し、 その後濾過乾燥し溶解重量を測定した。なお、これらの溶液温度は18〜20℃である。さらに尿石除去剤の原液50mlにアルミニウム片1g(20×10×1/mm)を 24、72、120時間浸漬しアルミニウム片の外観及び重量の変化を検討した。更にモリブデン青法により、除去剤中のPO4も測定した。

  2. 成 績

     ウサギ尿石の完全溶解所用時間は100%でタスカルサン7分、ライムアウエイ11分、ネオバリューAL14分、サンアライエース26分 であった。また50%水溶液でも上記の順で溶解所要時間は25〜93分であった。さらに10%水溶液での溶解重量は、タスカルサン0.98g、ライムアウエイ0.95g、 ネオバリュー0.54g、サンアライエース0.5gの順であった。

     つぎにモルモット尿石の100%では、タスカルサン9分、ネオバリューA.L NP17分に対し他種は33〜34分であった。また50%水溶液では タスカルサン、ネオバリューA.L、ライムアウエイ、サンアライエースの順で所要時間は26〜88分であった。10%水溶液では、ネオバリューA.L NP1.31g,タスカルサン 0.96g、ライムアウエイ0.89g、サンアライエース0.63g、ネオバリューA.L0.61gの順であった。

     つぎに、アルミニウム片の腐食性試験では、120時間浸漬でもタスカルサンとサンアライエースおよびネオバリューA.L NPは外観および重量 には全く変化を認めなかった。しかし、ライムアウエイとネオバリューは48時間で表面が黒色に変色し、72時間では10〜5%の重量減、さらに120時間では17〜10%の 重量減を認めた。また秋田県の水質汚濁防止条例に基づき4種類の除去剤中のPO4を測定したところ、ネオバリューA.Lは基準値をはるかに越える含有量182,000mg/l (18.2%)を示したが、他の基準値内であった。

  3. まとめ

     市販の4種類の尿石除去剤の溶解力は、ウサギとモルモット尿石間での差はほとんどなかったが、4種類とも100%では多少ウサギ尿石に対 する溶解力が強い傾向にあった。今回の成績から最も作業効率が高いと思われるものはタスカルサンであった。またアルミニウム片の腐食性試験では、ライムアウエイと ネオバリューA.Lは長時間浸漬することによる影響が認められた。ネオバリューA.LはPO4の含有量が一番多かった。
本発表は日本実験動物技術者協会第30回総会(沖縄)の講演要旨集にも記載されている。