ブタバランチジウム症ついて
石郷岡 清基・追留 吉雄・松田 幸久(秋田大学・医・動物施設)
バランチジウム Balanntidium coli (以下B.coliと略す)は,家畜に対して病原性を示す唯一の繊毛虫である。また,その病原性についても通常は宿主に病害を及ぼすことはほとんどなく,宿主の腸管(主に大腸)に原病変が存在している時にのみ腸粘膜に侵入して腸バランチジウム症を引き起こすといわれている。また,本原虫はヒトへの感染も知られており,人獣共通感染症(zoonoses)の見地からも無視できない。
- 分類及び形態
バランチジウムは繊毛虫門に属する大型の繊毛虫であり,ブタに寄生するものはB.coli 一種と考えられる。
B.coliは栄養型(trophozoite)とシスト(cyst)の2形態からなり,周囲の環境条件の悪化でシスト化する。栄養型は卵円形を呈し,大きさは体長30〜100μm,体幅が20〜70μmと大型であるが,60〜90×30〜60μmのものが多い一方シストはほぼ球形で大きさは直径45〜70μmでシスト壁は厚い透明な2層の膜になっている。
- 発育環及び宿主
通常は栄養型として大腸内に生息し,活発に運動して腸内のデンプン顆粒や細菌を摂取している。宿主の腸管に炎症がある場合,その組織破壊部位から腸粘膜上皮内に侵入し分裂増殖し,栄養型虫体のコロニーを形成する。感染宿主はヒトの他ブタ,サル,ウシ,イヌやラット等々である。
- 治療及び予防
B.coli 症の治療にはメトロニダゾール 0.25gを1日2回の3日間連続投与が有効であるが,最近はオキシテトラサイクリンまたはクロルテトラサイクリンをそれぞれ50mg/kg/day,2〜3日間投与する方法も試みられている。予防は感染源であるシストの拡散を防ぐことで汚染糞便処理を完全に行いブタを飼育することが重要である.