イギリスの都市部では社会の成熟と生活水準の向上に伴い、環境保全や動物愛護、食品の安全を求める市民団体が力を得ている。この都市部の支持を得て1997年5月に保守党から労働党に政権が代わったが、労働党の選挙公約一つに「野生動植物の保護や動物福祉の向上」があげられている。ブレア政権はその実現に努力している。しかし、農村部の人々はブレア政権の方針を必ずしも全面的に支持しているとは限らないようである。

 従来の英国システムでは、各施設が適正に動物実験を行っていることを確認する方法は、内務省の査察官による事前通告なしの施設訪問であった.しかし、内務省査察官は20名と少ないことから、英国全土の施設をカバーすることは困難であった.また、施設において適正な動物実験を推進する責任はCertificate Holderにあるが、実際には研究者が一度ライセンスを取得すれと、彼らがライセンス通りに実験を行っているか否かを追跡調査する方法は殆どなかった.さらに、動物実験計画の申請書が内務省に提出された場合、その申請書の内容を修正するために査察官が多くの時間を割かなければならなかった.

 そのため、内務省査察官の仕事をカバーし、よりきめ細かな倫理的動物実験の実施を促進するために1999年4月から研究所内に動物実験委員会(The Ethical Review Process)を設置する法令が施行された.