酸化チタンを利用した脱臭装置による飼育室での脱臭除菌効果の検討

抄録

松田幸久,石郷岡清基、河原崎哲、末永義明2(1秋大動物施設、2五洋建設)
[目的]

糞尿中の尿素が分解して発生するアンモニアは、その濃度が高まるとマウス・ラットに呼吸器症を発生しやすくさせるため問題となる。

「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」では悪臭の発生を防止し生活環境を保全するよう求められている。そのため動物実験施設では脱臭フィルター等を用いて悪臭の防止に努めている。今回、酸化チタンを用いた脱臭装置(五洋式光脱臭装置)にてアンモニアの脱臭効果及び除菌効果について検討したので報告する。

[方法]
  1. 飼育室の状況

    15m2の面積を有する飼育室にラット約400匹を収容。ケージ交換回数は原則として週一回。

  2. アンモニア濃度及び落下細菌数の測定

    アンモニア濃度の測定は、パッシブドジチューブ(井内)により行なった。落下細菌数の測定は、血液寒天培地を用いて行なった。

[成績]

 ケージ交換7日後に飼育室のアンモニア濃度を測定した結果、脱臭装置が未稼働時では、アンモニア濃度が20ppmを上回った。一方、本装置を稼働した場合には、6.0〜9.8ppmとアンモニア濃度の低下が認められた。また、本装置のファンのみを運転し、紫外線を点灯させなかった場合の、アンモニア濃度は、15ppmであった。

 落下細菌数では、未稼働時のケージ交換中では90〜100個、ケージ交換数時間後では10個前後であった。稼働中の落下細菌数は、それぞれ30〜40個、5個以下と低下が認められた。また、本装置のファンのみを運転し、紫外線を点灯させなかった場合では、落下細菌数はそれぞれ50個、5個以下であった。

[結論]

 酸化チタンを用いた脱臭装置を使用することにより飼育室のアンモニア濃度1/3〜1/2以下に減少した。また、落下菌数が1/10以下となり優れた除菌効果も確認された。

 本装置によるアンモニアの分解メカニズムは、1)アンモニアの触媒表面への吸着、2)酸化チタンの光活性による分解であると考えられる。また、その分解生成物は不明であるものの硝酸や亜硝酸などの環境に悪影響を及ぼす他の有害窒素化合物ではないことも確認されている。

 本装置は、定期的な紫外線ランプの交換で半永久的な使用が可能であり、将来的には施設の空調機本体に本脱臭装置を取り付けることにより、悪臭の効果的な除去とフィルター交換経費の削減が期待される。


[図3の説明]
  1. 紫外線が酸化チタン(TiO2)に当たると電子が飛び出し、電子が抜け出たところはプラス電化をおびた正孔(ホール)となる。

  2. 正孔は、アンモニアを吸着し、アンモニウムイオンとして触媒表面に蓄積するとともに空気中の水酸化物イオンから電子を奪い取り酸化力の強いOHラジカルを生成する。

  3. OHラジカルは、自身の安定化のためにアンモニアや有機物より電子を奪う。

  4. 電子を奪われたアンモニアや有機物は結合を分解され最終的には二酸化炭素や水となり無害化され大気中に発散する。