黄河のほとりへ(5)

  さて、仕事を全て終え馬さん、テイさんの案内でいよいよ蘭州の町に繰り出す。蘭州市は黄河の畔にあり、市場には黄河蜜というメロンや葡萄など 近隣で取れる果物が溢ている。人口約260万人の都市は人々で活気を呈している。まずは腹ごしらえ。物はためしと蘭州ラーメンを食べに行く。 ご飯茶碗よりやや大きめの器にそれぞれ入れられた太さの違う2種類のラーメンが運ばれてきた。2種類とも食べるのが通だとか。辛みの効いた 具をのせた手打ちラーメンは日本のものとは趣を異にする。しかし結構旨い。この日は天候も回復し、午後から市内にある白塔山公園に登り眼下に 黄河と蘭州の町を眺める。この辺りの黄河の川幅はそれほど広くはないが、水は濁り流れは速い。上からみると蘭州の町は霞がかかったようにスモッグ で覆われている。ここは工業都市でもある。

 夕方、 研究所長の王成懐氏より市内にあるレストランでの晩餐会に招待される。彼は何度も日本に来ているとのことでかなりの日本通である。食事の間中, 日本語での会話が楽しくはずむ。蘭州は回族などイスラム教徒が多いために料理も羊肉を主体としたイスラム料理であり、羊の顔の肉とか得体の知れない 料理が次々と出された。同行の二人のうち久原先生はあまり箸がすすまぬようであったが、私は苦手な香菜以外は結構美味しくいただいた。特にラクダの 足のスープが絶品であった。写真は黄河の畔でそのスープのもとになるラクダに乗た時のスナップである。学生時代は馬術部員として鳴らした私だが、 馬とラクダではやはり勝手が違い思うように動いてはくれない。写真の背景は白塔山公園から連なる山々である。緑が少なく黄河から汲み上げた水を スプリンクラーで山肌に散水している。蘭州には禿げ山が多いが。

 わずか40日足らずの国際協力であったが、その間に現地の人達と一緒に飯を食い、酒を飲み楽しく過ごすことができた。 仕事面では驚くこと、頭にくることもあったが、帰国後ユン・チアンのワイルドスワンを読み、過去の歴史が中国の人々の心に濃い影を落としていることが おぼろげながら理解できた。

 現在蘭州市では緑化運動が進められている。山々の緑が豊かになり、人々の心に真の明るさが戻った頃、もう一度足をはこ んでみたい。黄河のほとりへ。

黄河のほとりへ(1)