• イギリス・ケンブリッジ大学のマーチン・エバンスがマウスでES細胞を作成(1981年)

  • カペッキ(アメリカ)、スミティーズ(アメリカ)とともに相同遺伝子組換え技術によりKOマウス作成に成功(1989年)

    マウスゲノム解読を完了、遺伝子の8割人間と共通

    ――理研など無償公開、創薬推進弾み


     理化学研究所など日米欧の国際共同チームは4日、医薬品開発の代表的な実験動物であるマウス(ハツカネズミ)のゲノム(全遺伝情報)の解読を終えたと発表した。マウスの遺伝子は人間と八割が共通していることが判明、製薬会社が取り組み始めている遺伝情報に基づく「ゲノム創薬」の推進に大きく弾みがつく見通しとなった。

     解読結果によると、ゲノムの大きさを表すDNA(デオキシリボ核酸)の塩基配列数は人間より14%少ない約25億だった。その中で医薬品開発などに直接役立つ遺伝子は、判明している人間の遺伝子と8割が同じで、残り約2割も類似していた。全く異なる遺伝子は約1%だった。

     ゲノムの解読は米ワシントン大学、英サンガー研究所などが実施、理研は主として遺伝子の特定作業を担当した。全体の遺伝子の数は「たんぱく質を作らないものを含め4万数千から7万程度」(理研)と推定している。これらの情報は5日付の英科学誌ネイチャーに発表、世界の研究者向けにインターネットなどで無償公開される。

     マウスゲノムの解読を受け製薬会社は「病気の原因解明が加速し、医薬品開発の期間短縮にも役立つ」(藤野政彦武田薬品工業会長)と歓迎、遺伝情報を手がかりにしたゲノム創薬を本格化する。

     例えばがんなどの難病の原因となる遺伝子が分かった場合、人間と共通する遺伝子をマウスから見つけ出し、その遺伝子を欠いたマウスなどを使って詳しく研究する。こうした原因遺伝子の働きを抑える薬もマウスを使って試す。

     

     ヒトに続いて主要な実験動物であるマウスのゲノムが分かったことで、マウスの遺伝情報を人間と比較していかに医薬品の開発に結びつけるかが、製薬会社の研究開発の優劣を左右することになりそうだ。

     マウスゲノムについては昨年4月、米セレーラ・ジェノミクス社が塩基配列を解読したと発表、有料で公開している。今回の情報は「解析の精度が高い」(理研)うえ、理研が特定した約3万3000種類の遺伝子に関する情報を合わせて公開するなど、創薬研究に直結する内容となっている。

    [2002年12月05日/日本経済新聞 朝刊]



    秋田大学のマウス収容数


    現在KOマウスも含め遺伝子改変マウスは5万系統にものぼる。