倫埋基準による医学生物学実験法に関する分類

(Laboratory Animal Science版)



カテゴリー


処置例および対処法

カテゴリA


生物個体を用いない実験あるいは植物、細菌、原虫、又は無脊椎動物を用いた実験
生化学的、植物学的研究、細菌学的研究、微生物学的研究、無脊椎動物を用いた研究、組織培養、剖検により得られた組織を用いた研究、屠場から得られた組織を用いた研究。発育鶏卵を用いた研究。
無脊椎動物も神経系を持っており、刺激に反応する.従って無脊椎動物も人道的に扱われなければならない。
カテゴリB


脊椎動物を用いた研究で、動物に対してほとんど、あるいはまったく不快感を与えないと思われる実験操作
実験の目的のために動物をつかんで保定(拘束)すること。あまり有害でない物質を注射したり、あるいは採血したりするような簡単な処置。動物の体を検査すること。深麻酔により意識のない動物を用いた実験。短時間(2〜3時間)の絶食絶水。標準的な安楽死法で瞬時に殺処分できる場合(例えば、大量の麻酔薬の投与)。軽く麻酔をかけ鎮静状態に陥った動物を断首することなど。
カテゴリC


脊椎動物を用いた実験で、動物に対して軽微なストレスあるいは痛み(短時間持続する痛み)を伴う実験。
麻酔下で血管を露出させ、カテーテルを長時間挿入すること。行動学的実験において、意識ある動物に対して短時間ストレスを伴う保定(拘束)を行うこと。フロイントのアジュバントを用いた免疫。苦痛を伴うが、それから逃れられる刺激。麻酔下における外科的処置で、処置後も多少の不快感を伴うもの。
カテゴリCの処置は、ストレスや痛みの程度、持続時間によっていろいろな配慮か必要になる。
カテゴリD


脊椎動物を用いた実験で、避けることのできない重度のストレスや痛みを伴う実験。さらには麻酔薬や鎮痛剤、精神安定薬を用いることのできない実験、長期にわたる潜在性のストレスを伴う実験操作や安楽死を適用できない実験操作も含まれる。
行動学的実験において故意にストレスを加えること。麻酔下における外科的処置で、処置後に著しい不快感を伴うもの。苦痛を伴う解剖学的あるいは生理学的処置。苦痛を伴う刺激を与える実験で、動物がその刺激から逃れられない場合。長時間(数時間あるいはそれ以上)にわたって動物の身体を保定(拘束)すること.攻撃的な行動をとらせ、自分自身あるいは同種他個体を損傷させること。麻酔薬を使用しないで痛みを与えること。例えば、毒性試験において、動物が耐えることのできる最大の痛みに近い痛みを与えること。つまり動物が激しい苦悶の表情を示す場合。放射線障害をひきおこすこと。ある種の注射、ストレスやショックの研究など。
カテゴリDに属する実験を行う場合には、研究者は、動物に対する苦痛を最小限のものにするために、あるいは苦痛を排除するために、別の実験計画を考案する責任がある。
カテゴリE


麻酔していない意識のある動物を用いて、動物が耐えることのできる最大の痛み、あるいはそれ以上の痛みを与えるような処置。
手術する際の保定(拘束)のため、麻酔薬を使わずに、筋弛緩薬あるいは麻痺性薬剤、例えばサクシニルコリンあるいはその他のクラーレ様作用を持つ薬剤を使うこと。麻酔していない動物に重度の火傷や外傷をひきおこすこと。精神病のような行動をおこさせること。家庭用の電子レンジあるいはストリキニーネを用いて殺すこと。避けることのできない重度のストレスを与えること。ストレスを与えて殺すこと。
カテゴリEの実験は、それによって得られる結果が重要なものであっても、決して行ってはならない。なお、カテゴリーEの実験はアメリカ合衆国の法律でも禁止されている。
Laboratory Animal Science. Special Issue : 11-13, 1987による