平成10年度実験動物慰霊祭




 平成10年度秋田大学医学部実験動物慰霊祭が9月22日(火)午後3時30分から動物施設玄関脇にある慰霊碑前で行わた.三浦 亮医学部長の祭主挨拶に続いて利用者を代表して山田勝也助手(生理学第一講座)から祭辞をいただいた。
前日からの台風7,8号の影響が心配されたが,慰霊祭中は雨に合うこともなく式典は無事に行われ,約100名程の参加者が慰霊碑に菊の花を捧げ、実験に使用された動物の霊を供養した。


祭主挨拶

慰霊のことば

 本日、平成10年度秋田大学医学部実験動物慰霊祭を挙行するにあたり、医学医療の研究のため貢献された諸動物の御霊の前に深く頭を垂れ、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

 このたび、新たに祭られた御霊はイヌ31頭をはじめとする10種18,142の御霊であります。
今日,医学の進歩,生活環境の改善は,年々人間の寿命を延ばして参りました。新しい治療法の確立,新薬の開発もこのことに大きく寄与して参りました。

 しかし,その成果の多くは動物実験に依存したものであり,動物実験の支えなくして今日の進歩はあり得なかったと申し上げて過言ではありません。
 更に,動物実験による恩恵は,単に医学の世界にとどまらず,食品を始め私どもを取り巻く生活環境の解析や人間の行動心理の研究などの分野にまで及んでおります。
 私どもは,さまざまな動物とのかかわりの上にたって,人類の生存と繁栄があることを深く認識し,動物実験に直接携わる者は,特にこれらの動物に対し,深い思いやりと感謝の念を忘れてはならないと思っております。
 また,このような動物の貴重な存在に気付かずに生活している人々に対しては,この事実を知っていただくよう努力し,感謝の念を忘れている人々には,反省を促したいと思います。
 そのことが,実験に関連して生命を失った動物に対する謝恩の志を捧げるばかりでなく,生存中の動物に対する道義的・倫理的な扱いにつながるものと確信いたします。
 命あるものの御霊を祭ることは私たち人間の情のなせる業であり,その対象が人間であっても動物であっても古今東西変わりのないものであろうと思います。
 ここに本学部における医学医療の研究のため,この世を去った数多くの動物の御霊に心から感謝の誠をつくすとともに御霊よ安らかに眠れとお祈りし,慰霊のことばといたします。
   

平成10年9月22日    
秋田大学医学部長    
三浦   亮      

祭 辞


 平成10年度秋田大学医学部実験動物慰霊祭にあたり、利用者を代表してここに謹んで祭辞を述べさせて頂きます。

 平成9年度の1年間において、秋田大学医学部及び医療短大における使用実験動物数は、イヌ31頭、ネコ42匹、ウサギ567羽、モルモット306匹、ニワトリ128羽、ラット11,203匹、マウス5,807匹、ハムスター24匹、ブタ20頭、ヒツジ14頭の多くを数えます。

 その結果、115編の論文発表及び284件の学会発表がなされ、基礎医学の進歩、臨床医学の進歩、医学生の教育に大きく寄与,貢献しました。

 さて近年、遺伝子情報の解読に象徴されるように生命科学は急速に進歩しています。しかしながら,こうした成果の一端は,実験動物の貴重な犠牲の上に得られた情報によって支えられていることを,我々研究者は常に深く認識する必要があると考えます。

 もとより動物実験を行うに当たっては,その実験が必要不可欠なものであるか繰り返し慎重に検討し、安易な態度で動物実験に臨むことは戒めなければなりませんが,一方動物に苦痛を与えない非侵襲的実験,あるいはすでに樹立された細胞株を用いるなど,直接動物実験を行わない研究手段を模索することも必要であると考えます。

 残念ながら現状では,動物実験をこれら代替実験に全部置き換えることはできない状況にありますが,やむを得ず動物実験を行う場合にも,動物愛護の精神に基づき,動物に無用の苦痛を与えないよう細心の配慮をするべきであると考えます。

 このような観点から,動物実験施設では、動物実験に関する講習会を定期的に開催し、また動物実験委員会では、実験計画が本学部動物実験指針に適合しているかどうかを厳正に審査しております。

 しかしながら,なによりも重要なことは、まず私ども直接動物実験に携わる一人一人が,実験動物を大切に思い,扱う心構えであると思います。

 本慰霊祭にあたりまして、改めて医学の進歩のために犠牲となった数多くの動物の御霊に対し、心より感謝の念を捧げ、安らかな眠りにつかれることをお祈りして、祭辞とさせていただきます。

平成10年9月22日       
秋田大学医学部生理学第一講座    
山田 勝也           

動物実験施設からの報告

 動物愛護週間に併せまして実験動物慰霊祭の日を決めておりますが,今年は図らずも台風にもあわせてしまったようです。しかし,幸いにも台風7号と8号の合間を縫って,無事慰霊祭を終われそうですので安心しております。

 それでは,平成九年度の本施設利用状況を報告させていただきます。

 本施設を利用して平成9年度に行われました動物実験は全部で162件で、延べにして約10,000名,1日に約30名の人が施設を利用しております。

 動物実験を行って発表した論文数は115編、学会発表数は284題となっております。 また、本施設において動物実験を行い学位を取得された方は甲の課程博士が25名、乙の論文博士が10名の合計35名であります。

 昨年度に使われました動物種のそれぞれの数は先程の祭辞のなかでも述べられておりましたが、全部で約18,000匹となります。この匹数は前年に比べまして,4,000匹程多くなっております。5〜6年前に比べますと,イヌ,ネコの使用数は激減しておりますが,マウス,ラットの使用数は2倍近くに増えております。それを反映してか,発表論文数,学位取得者の数も前年に比べて増加しております。

 このような研究業績の向上,学位取得者の増加を見るにつけ,動物実験施設職員は研究者を支援することにより,秋田大学医学部発展のために貢献できているものと嬉しく感じております。

 ところで,昨今動物保護法改正の動きがあることは新聞報道等ですでにご存じのことと思います。 自民党環境部会では自然と人間の共生、大気環境、水環境の改善をめぐる問題に取り組んでいるようですが,その環境部会の中に動物保護法の改正を検討するための「小委員会」が昨年末に組織されました.動物保護法の目的には“国民の間に動物を愛護する気風を招来し,生命尊重,友愛及び平和の情操の涵養に資する”とあります。相次ぐ少年犯罪への対処も絡めて,この法律を実効性のあるものに改正することに,各政党とも大きな関心を示しているようです.

 改正対象の動物は主にイヌ,ネコなどのペットなのですが,動物愛護団体では動物実験も規制するよう要望書を出しております。

 動物保護法の改正は我々実験動物関係者にも大きく関わってくることですので,大変気にかかるところです。今後適切な措置が講じられることを切に望んでおります。

 動物愛護団体ばかりではなく一般市民の一部にも「白い巨塔の中で何が行われているのか」と不安をもっている方もあるようです。そのため,当施設ではインターネットを利用し,動物実験に関する情報を公開しております。

 また,施設職員は秋田大学医学部動物実験指針に準拠し,実験動物の科学的かつ倫理的な管理を行うことにより,今後とも当学部の発展に貢献していくことを,只今,実験動物の御霊に誓ったところです。

 実験者の方々にも動物福祉に配慮した適切な動物実験の実施に心がけるようあらためてお願いする次第です。最後に雨の中をご参集いただきました皆様そして本日の慰霊祭の準備のためにお骨折りいただきました事務の方々に感謝いたします。

平成10年9月22日     
附属動物実験施設     
副施設長 松田幸久    

秋田大学医学部実験動物慰霊式